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日々の破片

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2012-04-25

_ 手間暇には金がかかる

こないだ、eno(イーノみたいだな)さんが、台湾だかどこだかで食ったさそりの写真を上げていたので、おれも食ってみたいなぁとか反応したら、日本でも食えるという話になって、今日、WDDが終わったあと、有志4人でディープ新宿へ食の追求の旅に出た。

で、新宿区役所脇に入ると、キャバクラとホストクラブと無料案内所が立ち並んでいて、あれ? 新宿区役所脇ってこういう地帯だったっけ(1本裏じゃなかったっけ?)とか思いながらも、最奥へと向かうと、えらく狭い小路の中に目当ての店があった。

上海小吃

メニューをみると、みたこともない食べ物がたくさん並んでいて、これも食いたい、あれも食いたいと、食欲と知的好奇心と獣的好奇心がやたらと刺激されて目の毒だったらありはしない。

とりあえず、さそりのから揚げは、それが目当てなのですぐ決まったが、さて、何にするか。

サソリの唐揚げ

その昔、春の鳩は膾に限るという言葉を流れ板の暮さんのマンガで読んでからずーっと気になってた鳩が(膾じゃないのが残念だが)揚げ物であったので、それを選んで、それから妙に田螺料理がいっぱいあるので、えらく魅かれる。

店の人が良いタイミングで、螺が入ったよ、と声をかけてきたので、では螺も食ったことが無いから、煮込みを頼んだ。どうも田螺は春からの食い物らしい(他には7月からザリガニがあるとか、季節ものってのもあるらしい)。で、価格をみると、1000円、他よりも高い。なぜ、田螺が高いんだ? と不思議に思ったが、食べてみたいものはしょうがないので、そのまま頼んだ。

で、これがうまいのだが、極端に小粒の巻貝なので、食い方にえらくコツがいる。入り口のところに口をつけて強く吸い込んで食う(で、失敗したら楊枝で突いて食う)。これが結構難しい。しかも、サザエほど極端ではないけど、やはり蓋があって、これは食ってもうまくないので捨てるのだが、直径5mmくらいなので面倒ったらありゃしない。が、貝そのものと、味付けはおいしいので、それは勘弁してやる。

で、最初は熱いので、小粒の貝(しかも煮汁でべとべと)を持つと熱いし滑るしで、なかなか食いにくいのだが、逆に吸ってて失敗している人がいたり。で、良く良くみると、巻きの先端が切り落としてある。強く吸うために、巻きの先端を切り落として、管状にしてあるのだ。

で、きっと中国本土で切り落として売っているのを仕入れているんだろうとか話していたら、店の人が、上(つまり調理場)で切ってると教えてくれた。へー、それはやっかいな料理だなぁと感心した。

鳩は皮がテリがついたぺりぺり(調理方法としては北京ダックみたいな感じだが、一羽の半分が丸丸出てきていて、肉は少ないがそれなりの味があり(というところから、膾で本当に食えるところがあるか疑問に思ったが)、しかし本当に旨いのは皮で、不思議な食い物だった。

鳩の揚げ物

そのほか、湯葉と書いてあるが、豆腐で作ったガーゼのように妙に網目がはっきりした湯葉を結んだもの(木綿豆腐の表面を薄く切り取ったものの水気を切ったものに見えるのだが、湯葉なのかなぁ?)と肉の煮込みとか、enoさんお勧めの油で揚げたパンを、浅利の煮つけの煮汁にひたして食うやつとか、いろいろな食い物を食えて実に幸福な一時を過ごし、さて満腹したからこれで終わりかなぁとか言っているタイミングで店の人がデザートを食えと言ってきた。

まあそれもありと、メニューをみると、カエル(口へんに合う)のシロップなんちゃらみたいなのがあって、当然、気になる。これが、杏仁豆腐なんかの3倍近い価格で、どうしてこれっていうのは高価なのかなぁと思いながら、それを頼む。

するとなんか透明のシロップの中に半透明でびよんびよん(に見えるけど、食感はふにゃんふにゃんみたいな感じ。これはこれで美味しいものだが、味がどうこうではなく、食感の不思議さを味わう食い物だなぁ。店の人の勧めにしたがって杏仁豆腐を中に入れて食ったら、これまた良い感じだった)が入っていて、店の人によると卵巣だという。というか、まだ産卵していない卵ということのようだ。で、これも話を聞くと、筋があって食いにくいから細かく切れ込みを入れるとか言う。

そこで、螺の値段を思い出し、食材うんぬんではなく(というか、田螺にしてもカエルにしても、輸入食材としてはそんなに高価じゃないだろう)、手間がかかる食い物は値段が高いということに気付いた。

そりゃそうだ。

どうも、原材料費が高価=高価な食い物という、頭がストレートな中学生みたいな考え方にとらわれていたようだ。

食材の価格は当然あるにしても、手間がかかる食い物は価格が高い食い物なのだ。そりゃ、あれだけ小さな田螺の貝殻の先端を切る手間考えれば他の皿より高くて当然だろうし、豆腐を削ぎ切りにすれば済む杏仁豆腐より、ぷにょんぷにょんの食材の筋目を切っていく卵巣のほうが高くて当然だな。

というわけで、未知の味わいを楽しめたのみならず、手業に金を払うという当たり前の感覚を再認識できて有意義だった。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ atsushieno (2012-04-26 01:41)

あの田螺を4人でほじっている姿はなかなかシュールなものがありました。これで田鰻とかいろいろ未食のものが残っているのだから奥が深い…

_ arton (2012-04-26 02:00)

良い店に連れてってくれてありがとうございました。本当に奥深いですよね。まだまだ、田鰻、血(豚、家鴨、もう1種類は忘れた)、臭い豆腐、蛇の唐揚げ(食わなくても味は想像できるけど、うまいなら食いたい)、良くわからない水棲生物(魚がつくやつ)、後何があったかなぁ(というか、普通の肉でも食ったことない調理方法がたくさんあるし)。


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