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日々の破片

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2012-06-30

_ 怒りの酸っぱい葡萄

子供がこれおもしろいから読めと、スタインバックという人のエッセイを持ってきた。

英語の副読本だか教材だかのプリントで、どこの誰かは知らないけれど日常の風景としての人物というものに対して書いた小品で、確かに気がきいている。そのしんねりむっつりした背の高いおっさんが誰かは知らないけれど、朝8:12丁度に店の前を通らないと人生の一部に虚無が生じるというような感覚について語ったものだよ(カントの散歩道の商店主談)。

で、スタインバックという名前をスタインバックと認識できなかったおれは、この名前はスタインベックなんだろうか、それともスタインバックなんだろうか、と子供に訊くと、子供曰く、いやSteinbackだからスタインバックなんじゃなかろうか、ではおれが知っているスタインベックはなんだろう? 昔の日本人はbackをベックと翻訳したのかなぁとか言うと、一体、そのスタインベックとは何者か? と真顔で訊かれて返答に窮する。

お前はスタインベックを知らんのか? というかアメリカ文学についてカタログ的に10人上げろといえばまず間違いなく入る名前だし、文学としての価値という点からは最上位に君臨する金字塔がスタインベックだろうと言えば、いや知らんという。

ポオは知ってるだろう? カポーティは知っているだろう? マークトェインはもちろん知っているとして、ノーマンメイラーは知らなくてもいいけど、ヘミングウェイは知っているだろう? というようなどうでも良いやり取りをしながら、とりあえずja.Wikipediaを引くとSteinbeckだった。なるほどこっちはeなのか。良く似た名前があるのだなとか言いながら、でも知らんのなら、とりあえずこの紹介に嘘はなさそうだから読めと、『怒りの葡萄の項』を開いて渡す。

次々と人が死ぬんですが、と子供が言う。しかも風と共に去りぬの次に売れたとか書いてある。

それがアメリカというものだし、アメリカを理解するには何を措いてもまずは怒りの葡萄を読んで彼らの原風景の殺伐さを理解しなければ始まらないから、少なくともおれが幼かったころは、まずアメリカ文学といえば怒りの葡萄を読むところから始まったんだけどなぁと答える。

それにしても、フランス文学では未だにああ無情というかレミゼラブルだし、イギリス文学といえばディケンズ(オリバーツイストでもデビッドコパーフィールドでもクリスマスキャロルでもどれでも良いけど)なのに、アメリカ文学が変わったのだとしたら何かの政治的な意図でもあるのかな? とちょっと陰謀論がちらちらするが、さすがにそれは無いだろけど。

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)(スタインベック/大久保 康雄)


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