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上野の東京都美術館で、メトロポリタン美術館展。
午前中に行ったのだがえらい人ごみで驚いた。が、部分部分で隙間があるので、観たいものを観る分にはあまり問題なかった。
特に印象深かったのは、ミレーの麦穂の山:秋という作品で、これは展示してある部屋に入った瞬間から、そこに何かすごいものがある感が漂っていて、とにかくあの画は観たいなぁと思わせる何かがある。で、その2つ前の画あたりの隙間から真面目に前列に並んで、たどりついて驚いたのがミレーの画だということで、全体は明るい色彩で、中ほどに3つの麦穂の巨大な山、その前景に羊がいるのだが、ミレーといえば天才的な構図の作り手で画調は暗め(晩鐘とか種を撒く人とか)とばかり思い込んでいたので、そこにびっくり(つまり、全然ミレーの画だとは思ってもいなかった)。細部を観ると、特に手前だが厚めの塗り込みで光を表現していてこれが抜群に美しいと同時にゴッホまでもう一歩(こちら側にいる)という感じで、あれ、ミレーとゴッホというのは意外と近しい画家なのだなと感じて、これも新鮮な発見。やはり高名な人というのは高名足り得るものがあるのだなぁと感心しながら、次の次の画に行くと、ゴッホがミレーを模写した習作があって、そこにミレーに私淑していたとかあって、なるほど腑に落ちる。うまい展示だ。
で、そのゴッホの糸杉が、これは圧巻で、感動的な作品。普通ではないということはやはり普通ではない。
もう1つの発見はホーマーで最後の最後に灯台の画があり、しかしどこにも灯台は見えず、月は無いが月の光があり、妙な赤い点があり、異様な美しさ。で、妙な赤い点が実は灯台と知ってその数ミリの点に過ぎない対象を描くための舞台の壮大さに感服する。
ティントレットの表面のすすっと書かれた線。
ドラクロアの粗っぽさ。
ルソーの極端な風景。マグリットまであと一歩な単純さと異様さ。人のサイズと木のサイズ、いい加減な葉。全体を見るとまともなのに細かく見ていくと変というおもしろさ。未来の光景のようだ。
自然は三角と円錐(だったかな)の人の空虚なしかし見事な様式美。
ルノアールは人物がいなくてもルノアール。これこそ印象派というお手本のような作品(2つあった)。
ヴラマンクって佐伯祐三の先生なのかな?
メソポタミアのカエルの曲面。
兜としての機能性をまったく感じさせないライオンの兜。これおもしろいなぁと思っていたら、妻が、あの時代のゆるキャラとか表現して、確かにあれ被って行進してたりすればゆるキャラ大集合だなと想像して可笑しく思う。
後、名前忘れた人の名前忘れた作品で、確か糸杉の1つ前なのだが、これも展示構成の妙と言えるのだが、おそるべき傑作。風景画といってもこれは見事だなぁと(前がつかえているので)細部まで見て感心、(その技に)感動すると、糸杉が来るので異化効果がただごとではない。
お馴染みとなった廃墟のロベールは軽い水道の画だが悪くない。確かに他の画家たちの画業と並べられると(ときどき挟まる)ティファニーと同じく工業的な何かが感じる。
2つ目の部屋のボッスかな? おや違う名前だのサンアントワーヌの誘惑。小さなサイズに細かい書き込みで卵の化け物や透明なドーム、左上に業火、おれはこのころの新教になろうとする国の作品はやはり好きだ。ブリューゲル(子)の同様な作品。崩れた肉体や落ちる肉体(これは地獄なのだろう)に囲まれてこちらへ逃げてくる鎧武者と女性かな? の作品。何か題材があるようだが知らなった(ものでそのまま忘れた)。
唐突に青空を骨を透かして眺めるオキーフ。
グロテスク(かつ色調が激しい)でとても食卓向きとは思えぬフランスの作家の水棲生物の大皿。
素朴なのだが異様な迫力があるイングランドかスコットランドかあちらのほうだと記憶しているけど、アダムとエヴァ(ひげがないだけで、体つきはアダムとほとんど変わらないので奇異な印象を受ける。宗教的な理由なのか技術の不足かなんなのだろうか)の織物。工芸作品のコレクションもなかなかおもしろい。
いずれもおもしろかったが、実物の画を観るという点では、ミレーとティントレット、それにホーマーがとにかく圧巻だった。ミレーってすげぇ作家だったのだなぁ。
あと、メソポタミア人とは気が合いそうだな。
西洋美術ぴあ 『メトロポリタン美術館展』のすべてを楽しむガイドブック (ぴあMOOK)(-)
思い出した。2つ目の部屋だと思うが、扉の上に飾られていたのだろうという注釈がついた画があって、回りの自然描写は自然なのだが、中央の(忘れたけどクピドみたいななにか)が異様なひしゃげ方をしているのだが、しばらく不思議に思って観ていて気付いたが、下1メートルくらいから見上げるとおそらく正しい姿で見えるのじゃなかろうか。扉の高さが3メートル近くあれば、なるほど、確かに扉の上に飾る画として正しい、と思った。あれも印象的だった。
もう1つ、モーゼと言えば葦舟の中を拾われるところなのに、王女が乳母(実は実母)に世話をさせるというモティーフの画があって、これも印象的かつ名のある画家なのだが(忘れた)、たぶん依頼主がこれを書けと指定したのだろうという注釈があって、おもしろいなぁと感じた。
ティントレットと言えば、ヴェネツィアの港を主題とした画が2種類あって、1つはアングロサクソンの近代の画で、もう1つは17世紀あたりのイタリアの画家(16世紀かも)で、後者の緻密さが非常に好みなのだが、子供は前者のほうが気に入ったようで、好みの違いというのもおもしろい。
アメリカの画家で、黒い塗りたくった山がポンッと放り投げられているような作品。これはいい作品。しかし作家は忘れた。
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