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日々の破片

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2013-02-01

_ シラグーザの愛の妙薬

新国立劇場で愛の妙薬。

シラグーザは、一昨年あたりにチェネレントラで見て、動きのおもしろさと声の良さ(というか、おれの好み)から一発でファンになった。

当然、出てきてなんか村人にちょっかいを出しながら、彼女はいつ見てもかわいいなぁを歌い出すとそれだけでうれしくなる。

さらにトリスタンとイゾルデをアッディーナが読むところでは村人の輪の中に入っておしりで押しながらどんどん中央へ移動するところとか、動きが見ていて楽しい。

人知れぬ涙 アントニーノ・シラグーザ オペラ・アリア集(ジョアキーノ・ロッシーニ)

(人知れぬ涙は得意なのだろうけど、しんどいらしい

ドゥルカマーラの人(ジローラミ)が低音部とは思えないほど良く通る歌いっぷりでこれも良かった。

キャベルはきれいな声なのだが中音が弱いのが原因だと思うけど、他の人の歌が混ざると途端に聞き取りにくくなる(と、子供が指摘して、確かにそうだなぁと思った)。

指揮のサレムクールは見た目は立派だが、バレンボイムの秘蔵っ子とか書いてあるのを読んでなるほどなぁと納得した(好みではない)。

ところでトリスタンとイゾルデは、ヴァグナーの楽劇を持ち出さなくとも、普通に悲劇で(tristeな主人公の名前から明白だ)、アッディーナが笑い出したり、惚れ薬を飲ませてめでたしのような艶笑談ではないはずだ。

すると、村の中で唯一の識字能力を持つアッディーナが(自分に惚れていることが明らかな)ネモリーノをからかうために村人を巻き添えにして自分ででたらめな話を読んでいるふりをして、語っている可能性が高い(ネモリーノはアッディーナから取り上げた本を逆さにして読んだりするくらいに字は読めない(ことを強調するために名前すら書けないことも志願書にサインできないことで示される))。

とすれば、アッディーナは本来悲劇的な状況がふとした戯れで喜劇となることをあらかじめわかっていたということになる(そういう状況を想定できるわけだ)。

かくして、どうでも良い実にくだらない話ではあるけれど、この話は劇中に挿入された物語によって逆に悲劇的な喜劇として描かれる。

というわけで、力いっぱいの喜びの歌の人知れぬ涙が、短調の物悲しい調べで歌われることになる。

見事な仕組みだ。

ドニゼッティ : オペラ「愛の妙薬」/リコルディ社/ピアノ・ヴォーカル・スコア(布装)(-)


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