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上野でスカラ座のファルスタッフ。
びっくりすることに、2階、3階の中央が埋まっていない。スター歌手が出演していないとか、演目がファルスタッフだとか、価格が安くはないとか、原因はいろいろありそうだな、と、子供と話す。
ファルスタッフは初見だが、20世紀に舞台を移したシンプルな演出で実に気持ちが良い。最初はホテルの一室、レストランの一室、50年代アメリカホームドラマっぽいキッチン、抽象的な街路、公園、大広間と動く。街路では白馬が首だけ出演。
この演出で観られたというだけで、とりあえずスカラ座公演を観に来て良かったと満足する。
オテロでイタリアオペラとヴァグナーの融合を図ったところまでは音楽でわかっていたが、ファルスタッフは作劇含めて、集大成なのかな? と考える。
2幕冒頭でのファルスタッフの本音な弱音は、まるでリゴレット2幕冒頭のマントヴァ公の彼女が心配のようだし、陰謀をたくらむ妖精たちの集団もリゴレットの廷臣たちの誘拐行のようだ。しかし、重唱は精緻のきわみで、特に第一幕の第二場だと思うが、奥さんと女中、娘+フォード氏と医者、悪漢2人+給仕がそれぞれ歌うところなど面白すぎる(さらに台所はもっとすごい)。歌の伴奏には木管を合奏させ弦を細かく分けていたり、ヴェルディっぽい音楽というよりは、むしろモーツァルトのようなクラシックな響きだが、ここぞというときは金管が鳴り響く。特に、そういう響きは終幕で感じる。
ファルスタッフの人は冒頭は声が小さいなぁと不満だったが、それはベッドに寝ていたからで、その後は見事に浪々たるものだ。付け合わせのテノールも美声、フリットリは歌うとフリットリの声でやはり好きな歌手だ。
プロンプターが無い不思議な空間でもあった(子供が舞台写真をtwitterで見たところでは、舞台袖から指示しているらしい)。
カーテンコールでは東京オリンピックの旗だかポスターだかを掲げて(誰が掲げたんだろうか? 総監督?)祝福してくれた。客商売だなぁ(感心している)。
観客の質は低い。少ないにも関わらず。音楽が鳴っていようがなんだろうが拍手し、偽終止で拍手し(というか、主音でないことはわかると思うのだが)、身を乗り出し、カーテンコールで写真を撮りまくる。価格と質はあまり関係ないのだな。
それにしても、ファルスタッフがこんなに良い曲だとは考えもしなかった。喜劇だというだけで避けるのはまったく愚かなことだと反省。
原作も読むか。
外に出て裏から帰ろうと森に入るとゴーンと鐘が鳴る。6時か。が、次が鳴らない。と思ったが、まだ微妙に余韻がある。完全に消えたと思うとまたゴーン。
ちょうどファルスタッフが12点鐘を数える舞台を見終わっただけに、上野の間隔で12点鐘したらそれだけで6分は使ってしまうだろうなと思った。
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