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妻が図書館で借りてきて、おもしろいからお前も読めと寄越したので読んだ。
図書館の本にしては珍しく帯がそのままついていて、そこのキャッチコピーがすごい。
大奥の女中はエリート官僚!ひれ伏す幕臣、群がる坊主
群がる坊主! だいたいひれ伏す幕臣って、大奥には将軍以外は入れないんじゃないか? (でも絵島事件とかは知っていたから、大奥の人が外に出ることがあるという知識はあった)
新書らしく後半はページを埋めるために書きまくったという感じだし、整理が中途半端な感じで、いまいちまとまりが無いのが欠点だが、それでも十二分におもしろかった。
最初に桂川てやの死と、その周辺事情から書き起こす。全然、知らなかったが、ターヘルアナトミア翻訳チームの桂川甫周の妹(ちょっと曖昧。妻に返してしまったので調べ直せない)らしい。年齢16歳だが御中臈(局長クラス)。
つまりは、大奥の組織図や御典医(IMEの無教養っぷりに腹を立てながら辞書登録)を含む、特殊な幕臣の説明のパートだ。年収がどのくらいあり、どのような役割を持ち、どのくらいの人数がいて、どこにどう暮らし、といったことが書かれて興味深い。
はじめて知ったのは、当時の年俸は、米なのだが(五俵扶持とか)、同じ米でも標準米と魚沼産コシヒカリではえらく価値が異なるのは、現在でも江戸時代でも同じことで、大奥の人たちはブランド米相当の米が支給される(一方、普通の幕臣は普通の米)。支給された米は直接食べるわけではなく(それはそうだ)、換金するわけだが、当然、大奥の人に支給された米は高値で売れる。つまり、普通の武士よりも高給取りである。
が、好事魔多し。服代や部下の面倒などで金はがんがん飛んでいく。親父(御典医は世襲なので親父も医者)に呑んだくれてないで、もっと働いて金を稼げ(=大名を往診しろ)という手紙を書いていたりする。
というわけで手紙だ。
江戸時代の女性はこまめに手紙を書いている。桂川てやだけではなく、もっと下っ端の女中たちも実家に手紙を書きまくっていたりするので、当時の状況が調べられるのであった。恐るべし江戸時代。読み書きは武家だけでも男子だけでもなく、普通のことだったようだ(だから絵草子だの読み本だので商売できたわけだから、それはそうだよな)。
桂川てやは、大奥が火事になったとき、御年寄(取締役クラス)を探しに戻って焼死してしまう。
そこで、江戸では、別に猛火に飛び込んで死ぬこたないのに、とか、猛火の中に探させにいく(広大院――徳川家斉の正室、大奥の組織上は社長クラス――が御年寄の安否を聞いた)とはどれだけブラックな会社なんだとか、大騒ぎとなる。良い時代だ。
てやの姪っ子が家族から聞いた話を書き残している(これもおれは感心した)。猛火の中に取り残されているのだから、死んだようです、と不確定情報を報告するほど無責任な伯母ではないから、決死の覚悟で調べに行ったのだ、立派なことではないか。何も死ぬこたないなんて言ってくれるな。
というあたりから、では主命の主の広大院とは、お年寄りとはと、大奥の上のほうに話が移る。
一方、将軍の娘を嫁にもらう大名の事情(ところが、事実上は、将軍家への婿入りとなる)を、金銭の行き来をベースに説明する。薩摩藩が優遇されたことや、それにからんで一ツ橋家がどう根回ししたり、金を貰ったり、払ったりしたかとか。
(という具合に、なんとなく筋は通っている構成なのだが、トピックが飛びまくるので、いまひとつ読みにくく感じるのだが、抜群に面白い。とにかく金がかかりまくるのだ)
しかも、大奥には400人とかが勤務している(御用商人の相手をする人とか掃除夫とか、金勘定する役人とか、男も相当数存在する)。この人たちは、最後の賃金を終身貰える(しかし、年期があるので、30過ぎくらいで大抵は退職する)。
まるで倒産前のJALのように、退職した人たちへの企業年金で、幕府は疲弊するのだった。で、ついに年金の減額を行い不興を買いまくる。
一方、日蓮宗が大奥にしっかり信仰として食い込み、幕府お気に入りの天台宗と壮絶なバトルを展開している。
上野の感応寺(日蓮宗)は、他の宗派を認めない過激派だったので、幕府により住職遠島、天台宗への宗派替え、ついでに寛永寺の支部に変えられてしまった。そこで池上本願寺の坊さんが大奥を動かす。が、紆余曲折あって、日蓮宗の感応寺を雑司ヶ谷に新たに作ることになった。
そこに作れば奴らが来る。
たちまち、単なる田舎の百姓地だった雑司ヶ谷に江戸中から観光客がやって来る。
観光客がうじゃうじゃくれば商業が成立する。というわけで、雑司ヶ谷の百姓が次々に観光客相手の商店に鞍替えする(農工商の間を自由に行き来できているように読める)。
そこに、雑司ヶ谷復興計画に命をかける名主がからんで、大騒ぎ。
が、権力のバランスが崩れてしまう。家斉が死んだのだ。
たちまち雑司ヶ谷の感応寺は破壊処分となる。
名主の夢は破れ去る。
このパートもどえらく面白い。
紆余曲折の末、薩摩藩は怒る。犯罪者集団を藩邸に呼び込み、大奥に放火するわ、江戸市中で放火や強盗をしまくる。
幕府の滅亡は近い。
慶喜は鳥羽伏見から逃げてきて、洋装のまま大奥に入ろうとする(先代の奥さんの和宮に調停を依頼するためだ)。しかし、断られたのでしょうがなく、紋付袴に着替える。
官軍は江戸を略奪しまくり、虐殺しまくろうとしていたけど、和宮の調停がきいて、乱暴狼藉はあまりできなくなりがっかりする。江戸城は無血開城となる。
大奥も解散となり、年金を貰えない失業者が大量に明治の世に放たれたのであった。
(というくらい、本書の後半はあれよあれよというまに終わる)
おれのAmigaに、ダンジョンキーパーがやって来たときの衝撃はなかなか忘れられない。
死ぬよりも遅い2DDのFDを突っ込むと、扉があり、マウスカーソルが手のカタチになる。扉をあけてダンジョンをうろつくと、英雄たちの殿堂に入る。
額縁の中の画を見て、アメゲー丸出しの稚拙でカッコ悪いプレイヤーに多少幻滅しながらパーティーを組んで、さあ本当にダンジョンへ入ると……
おっかなかった。
いや、もう本当に恐ろしい。ゲームをやっていて恐怖を味わうなんて思いもよらなかった。
キキキキーとすごい声がしてはっと気づくと紫の丸っこいやつがいてアイテムを盗んで走り去るのは、声は怖いがなんかユーモラスで許せるが(アイテムを盗まれるのは許しがたいが)、巨大なピンクの牙のある芋虫がグキーグキーと鳴きながら襲い掛かってくればおっかないし、後ろに近づく音がして振り返ると、巨大な蟹の化け物がシャーシャーと針を振り上げるのもおっかない。ネズミもおっかない。
むしろドラゴンはおっかなくないが、強いからゲームの進行上はおっかない。
プレイヤーの絵のトホホっぷりに比較して、モンスターの姿と鳴き声に対する力の入れっぷりが凄まじいのだった(これがMSX版ウィザードリーのセンスの良いモンスターならおっかなくはないだろうが、ダンジョンキーパーの画は本当におっかなかった)。
でも、最後に魔法使いが出てくると、これがトホホホホホホホな爺さんで、このゲームを作った連中は人間嫌いなんじゃないか、とか考えてみたり。
(追記:ダンジョン・マスターの間違いでした。ダンジョン・キーパーも買ったはずなんだけど記憶ないや)
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もしかして「ダンジョンマスター」? Java版が今でも出回っているようですね。
あ、そうです。マスターでした。今のマシンならJavaでもあの音が出せそうですね。