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昨日の夜、なんか妻がテレビを観ていた。オリンピックの話っぽかったのでスルーしようと思ったのだが、ちょっと観始めたらえらくおもしろかった。
観始めたあたりは、プルシェンコが4回転ジャンプをしたのに、アメリカの黒い天使の羽ばたきみたいに腕をくるくるさせる奴(名前は覚えていないし、調べるのは面倒なので、以下も一部を除き、こんな書き方するけど、こいつのスケーティングは観ていてえらくおもしろいなぁと思ったのは覚えていた)が金メダルを取ったのでプルシェンコがわざわざ1位の台に上ってから2位の台へ進むところだった。
で、そういうこともあって、オリンピック委員会でも競技の採点方法を変えて、ジャンプの比重を高くしたというようなことを言っていた。そのため、誰もが4回転ジャンプをする時代に突入した。
(というような、競技としての採点方法の話と、プルシェンコに憧れてとんでもなくカッコ悪いマッシュルームカットにした子供の羽生の写真を出して、とにかくプルシェンコが大好きというような談話をさせたりする羽生の話をうまく混ぜながら番組は構成されていた)。
で、1日に60回ジャンプの練習をする(多分、中学生のころだと思う)とか語っていて、そのころの練習風景が映るのだが、転びまくって体中傷だらけになっている。でも楽しそうだ。
おお、本当の天才だ。というわけで、俄然興味を惹かれて観ることにした。
天才ってのは、大山倍達みたいに、きみぃー、石を手刀で割るなんて簡単なんだよ。正拳突きを一日100回、10年やればいいだけだよ、と気軽に話して、その通りのことをしてみせる奴のことを言うのだ。あるいは、テニスの王子様(これはマンガだけど)みたいに、あーテニス部の部活が終わったー。疲れたねー、とか言いながら、他のやつが家帰ったら宿題やらなきゃとかゲームするぞとか言っているのに、おれは家に帰ったら親父とテニスすんだよ、とか言うようなやつのことだ。モーツァルトの曲はあまり好きではないが、「なんで他の作曲家は遊ぶひまがあるんだ? おれは朝から晩まで作曲しているけど、まだ作曲する時間が全然足りないのにな」とか不思議がっていたということを知ってから、人間は好きになった。
で、また試合の採点方法の話になって、その4回転時代にいち早く適応したチャンが出てきて、あっさりとアメリカの黒い服の人を抜き去った時の、ジャンプの技術点でどう差がついたのかが説明される。
そのころ、羽生はサルコウジャンプの練習をしている。が、とにかく着地に失敗して転んでは起き上がって飛んでは着地に失敗して転んでというのを延々と映す。そこで解説が入って、4回転は勢いがいるので普通はトウループでやるもので、トウループというのは左のトウで蹴って飛ぶのだが、羽生はサルコウで4回転を飛ぼうとしている。サルコウというのは右を回して左のエッジで跳ぶ方法で、難しいので4回転に使う選手はいないとか、図解が入って、おもしろい。
次に、キムヨナのコーチで今は羽生のコーチの人が、羽生とチャンのロングのプログラムの組み方の差を説明する。
羽生はサルコウが跳べる。これは必勝パターンなのだ。同じジャンプは1試合に1回しか飛べない。カナダは、4回転ジャンプはトウループしかできない。そのため、4回転のトウループを1回ともう1つは4回転と3回転(忘れたけど)のコンビネーションにする必要がある。前半の疲労度は高くなる。ところが羽生は10回に1回しか着地に成功しないが、サルコウの4回転ができる。そこで前半にサルコウとトウループの2つのシングルの4回転を入れることができる。チャンより疲労せずに後半へ進められる。これは猛烈なアドバンテージだ。すると後半の10%増し(後半は疲れるからかな? 点数を嵩上げする決まりらしい)では、より有利な状況でコンビネーションを跳べる。羽生の実力なら後半のコンビネーションジャンプでミスする可能性は限りなく低い。つまり点数が大きく稼げる。要するにサルコウに成功すれば問題なく勝てるし、仮に失敗しても後半の10%増しで点を取り戻して勝てる可能性がある。
おー、無茶苦茶おもしろい。スケートのコーチって、プログラムの点数配分設計のプロなのだな。
それはそれとして、練習重要だなぁとか、いろいろ感じるところがあった。コーチの設計もおもしろかったが、羽生はすごいな。
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