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米原万理のマイナス50℃の世界を読了。
なんかえらくページ数が薄い本だったみたいだ。
良くわかっていないが、この稀有なエッセイストが世に出るきっかけとなった本らしい。TBSの取材で、イルクーツクの奥地に行くにあたって、優秀な通訳が必要ということで出て来たらしい。イルクーツクなんて、まともに行った日本人は大黒屋光太夫からこのかたほとんどいないので、筆が立つ人間に紀行を書かせることになり、毎日小学生新聞(TBSだし)を担当したのが米原万理だった(のかなぁ)。
何しろ、一年の8か月はマイナス50℃はあたりまえで、マイナス70℃にまでなるところに冬に行ったわけだから世界が異なる。北極や南極よりも気温は低いのだ。南の山脈にさえぎられて寒波がとどまり、海から離れているから湿潤さがまるでない。そうなるとひたすら気温は落ち込むばかり。なるほど、水は温まりにくいが冷めにくい。しかも地面は夏の間に温度を貯め込んだりはしない。氷河期の名残の永久凍土だから、むしろ0度に冷やす。
でも、乾燥し切っているから、むしろ零下30℃程度の都会よりよほど過ごしやすい(カイロに行ったとき、気温は40℃を上回っても、日陰にいると、30数度の日本よりはるかに涼しく過ごしやすかったのを思い出した)。
道路は冬しか使えない。というのは、川が多いが橋をかけられない。しかし冬には川が凍るから道路がつながって使えるようになる。(夏にシベリア鉄道に乗ったことがあるが、電信柱がみな地上30cmくらいのところに立っていて、すごく不思議だったのだが、冬になると氷で2mくらい持ち上がるからこれで良いのだと車掌に教えてもらって驚いたのを思い出した。建築するのも大変だ)
というところまで読んで、それは氷の上をそのまま車で走るってことじゃん。と不思議に思いながら読んでいると、しかし行きかう車はチェーンをつけたりはしない。むしろつけないほうが安全で、一番良いタイヤは溝がないツルツルのやつだと書いてある。で、そもそも滑るのは、摩擦で溶けた水によってうんぬん、マイナス50℃では溶けない。だから滑らない。と説明されて、おーと得心する。
室温は20℃に暖房されているが、普通の家ではトイレは庭にある。マイナス50℃あたりまえの庭と行き来することで、心臓の収縮が頻繁におこり早死にするという仮説があるのだが、実際にはコーカサス地方に次ぐ長寿の町である。食事が良いのだろうとか書いてあって、とにかく野菜なんてどこにも取れないから、馬の血を飲み内臓を食べてそのあたりの栄養素は摂取するらしいことが書いてある。食事はものすごくおいしそうだ。食ってみたい。
というか、馬と人間以外は存在しないようだ。
哺乳類ってすごいなぁ。冷血動物は生存できないところで生活しているのだ。
で、さらにどういう服なら寒くないかとか、いろいろ書いてあることすべておもしろかった。
それにしても、行ってみたいものだ。
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