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日々の破片

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2014-05-25

_ ローマのシモンボッカネグラ

上野でローマのシモンボッカネグラ。アバードが亡くなった今となってはイタリアのマエストロと言えばこの人しかいないのかなぁというムーティ。

一体何歳になったんだろう? と不思議なくらいに若々しい。

で、弦を主体とした(室内楽的ですらある)序曲が始まる。良い音だ。

いかにも悪役っぽいパオロが出てきて、群衆が集まり、壁に灯る火、向うは夜だ。物語が始まる。

1幕になると、向うに海が見える。2場ではどでかなジェノヴァの獅子。

フリットリの代役のエレオノーラブラットという人はどうなのかなぁと思うと、なんかぱっとしないし高音が良くないなぁとか最初は思わせたが、シモンとの二重唱以降、悪くないというか良い。

でも、

Opera Arias(London Symphony Orchestra)

このCDで何度も聴いているフリットリのこの仄暗い夜明けにを舞台で聴いてみたかったな。

歌手は全体にとても良い。アドルノが実に朗々たる良い声で(役柄)間違ったことを歌いまくる。これも代役のはずのフィエスコの人が実に味わい深い。当然のようにシモーネの人(ペテアンという名前)は終始見事で、終幕の和解に至る二重唱が良かったのなんのって。

パオロが開き直って、もうちょっと意識的ならイヤーゴだという歌を歌うところのオーケストラが落雷のように威力があってしびれる(で、その後の歌も良かったのでパオロ役の歌手は気に入ったのだった。マルコカリアという人)。

あらためて舞台できちんと観ると、ベルディの一番の傑作はシモンボッカネグラなのかなという気になって来る。

ドンカルロスのようにキャッチーなソングナンバーは無いし、オテロのように実験や静謐さは無いし、しかしオーケストラの緊密感、重唱のうまさ、適度な上演時間、これが一番良い作品のような気がしてくる。最初にフィエスコが出てくるところのブオーンブオーンというのは、ドンカルロスの親父の苦悩の出だしに音が似ている(というか、こちらも親父の苦悩であった)。

台本としては、平民と貴族の対立、イタリア分裂期(ベネツィアとジェノヴァの協定の話が出てくるが議員に否定されるので、シモンが感動的な統一の歌を歌う)を背景に、親父(貴族)と親父(娘の恋人。海賊というか平民)と娘(平民出身の貴族)と娘の恋人(貴族)という複雑な家族関係、陰で政治を操る立場の人間が逆に操られることになる逆転、実におもしろい。おもしろいがイルトロヴァトーレのような破綻はない。

ヴェルディ:歌劇《シモン・ボッカネグラ》フィレンツェ5月音楽祭2002年 [DVD](クラウディオ・アバド)

(アバードが指揮しているのと安かったので購入したが録音バランスがむちゃくちゃでオーケストラばかり聴こえて歌手の声がほとんど聴こえないというひどいDVD)


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