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新橋演舞場で東をどり。
先日、妻が、何かを見て行こうと言い出したので行くことにしたのだった。
なんでも大正14年から90回記念らしい。細かいことはわからないが、新橋芸者の芸の披露用に演舞場を作り、その日に限り一般大衆に見物料を取って見せることにしたらしい。というわけで、料亭に行ったりしなくても東をどり(という興行は)誰でも安い見物料で観られるというわけで、おれたちも行ってみることにしたのだった。せっかく東京に住んでいるんだから、新橋色の新橋を知らないのはばかげている。
で、着いてみるとバスが入口前に並んでいるし、客層もいろいろ(とは言えじじばば多し)で実に興味深い。
演舞場に入るのも初めてだが、こじんまりとした2階建てで、とは言え花道もある立派な舞台だった(回り舞台になっている)。席は比較的ゆったりとしているし、悪くない。
最初は良くわからないが女性3人、女性の男が2人の踊りで、清元は花の都は新橋のくらいは聞き取れるがごく部分しかわからない。が、30分まるまる退屈せずに楽しめた。なんとなく女性3人、女性の男が2人だと思ったが、後で妻から足の開き方が違うのだと説明される。なるほど。
休憩時間は松花堂弁当を食べる。6つの料亭がそれぞれ趣向をこらし、どれが当たるかわからないという仕組みで、おれはやま祢とかいうふくの店のが当たり、妻は吉兆のが当たった。やま祢の弁当は豪快というか大雑把な見てくれだが(鱧握りとか米の単なる固まりに見える)、味付けは気持ちよかった。吉兆のは金箔が入っていたりご飯がこっていたり、ぱっと見の華やかさが良いものだった。
(やま祢の松花堂。玉子焼きは半分食ってしまった)
(吉兆の松花堂)
で第二部になると春夏秋冬と題されていたのはわかったが、最初は太閤の花見らしい春で、これはそれなりにおもしろく、夏は杜若に始まり水芸が入り夜の橋となる(のだと思う)。これも結構おもしろく、水芸とはこういうものかと。途中真ん中の人が兄さんが見ていると言いながら立ち去るので、はてなんのことやらと思ったら、滝の白糸であったらしい。
秋も橋なのだが、これは退屈して途中しばらく見ていなかったが、次に気付くとおはらしょうすけさんなんで身上つくったと変えた歌に始まり有名民謡パレードのような趣。
冬となるとさっぱりわからない。色男が手紙を読みながら部屋へ入ると御新造さんらしき女性がいてしばらくすったもんだした挙句、さささと退場していくというこれまた???となりながら見ている。まるでエフゲニオネーギンのような、はて面妖なと。
後で、藤十郎とお梶とアナウンスがあり、とは言えやはり見当もつかない。
出てから調べたら菊池寛の作品で、手紙と思ったのは近松門左衛門による台本、実際の女性を相手に道ならぬ恋の心のあやを見聞するための役者の知恵が当の女性を死に追いやるという、芸のためなら女も殺すというようなお話であった。なるほど、それは知らなかった。
次来るときは演目は予習したほうが良いということは良くわかった。せっかくのおもしろさが半減してしまう。あと清元の聴き取りはもう少しできたほうが良いな。なんのために日本語が理解できるのか、この聴き取り能力ではまるで無意味だ。
と、用意が足りずに反省する点もあるが、それにしても、実におもしろかった。日本の文化は良いものだ。
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