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日々の破片

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2014-06-11

_ 2つの想像力

文系と理系という分類はくだらないと思うが、次の切り口であればまあわからなくもない。

その切り口とは想像力に関するものだ。

最初に違和感をおぼえたのは、以前『子どもの思考力を高める「スクイーク」 理数力をみるみるあげる魔法の授業』(それにしても冗長な題だな)のアランケイのあとがきを読んだ時だ。

そこでアラン・ケイは次のように書いている。

人間というものは、所詮、頭の中の物語を作ることしかできなくて、地球の気候変動よりもサーベル・タイガーに興味を持ってしまうような頭の構造をしています。

子どもの思考力を高める「スクイーク」 理数力をみるみるあげる魔法の授業(BJ・アレン=コン/キム・ローズ/大島 芳樹/高田 秀志/喜多 千草/片岡 裕子/アラン・ケイ)

これだけだとなんだかわかりにくいが、雑誌(もしかするとWebかも知れないが)のインタビューでアラン・ケイが、テレビで氷河期の話をやるというので楽しみに観たら、サーベル・タイガーの親子がうろうろするくだらない番組で不愉快になったというようなことを語っていることに関係している。アラン・ケイにとって氷河期とは、サーベルタイガーの親子がうろうろする世界の物語ではなく、地球の気候変動のおそらくメカニズムがどこまで解明されたとか、そういったことが興味の対象だったのだ。

同じようなことはカール・セーガンも書いている。

悪霊にさいなまれる世界〈上〉―「知の闇を照らす灯」としての科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)(カール セーガン/青木 薫)

(おれはエセ科学がどうたらみたいな邦題のやつで読んだが、今は割と直訳な題になったのだな)

想像力というのは、今ここにないものを、自分の脳みその中で構成する能力だ。

そこに、どうやら理系と文系らしき違いがありそうだ。

たとえば、ビッグバンというのは、明らかに想像力の産物だ。宇宙の最初というものについて、現在わかっている法則からおよそ人間の想像力の限界まで突き詰めて求めた偉大な成果だ。

そういえば、NHKの神の数式という番組を観ていて、ディラックがディラック方程式を求めるために対称性が必要だと考えたというようなくだりがあったが、これも想像力以外の何者でもない。

つまるところ、数学が関係するものはほとんどが想像力の領域で、たかだか3平方の定理を証明するのですら、中学生には想像力を駆使しなければ求めることはできない。

この想像力は抽象的想像力と言って良いだろう(物理の場合であってもだ)。

その一方で、指輪物語のような想像力もある。世界を支配する指輪(を想像し)、それをわがものにしようとする悪とそれを破壊しようとする善があり、それぞれの側を代表する登場人物が想像上の世界を冒険する。

文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)(J.R.R. トールキン/瀬田 貞二/田中 明子)

こちらの想像力はアラン・ケイが唾棄している物語的(叙述的)想像力と言えよう。

そこで「想像力」という言葉から、気候変動のメカニズムを想像するか、サーベルタイガーの親子の冒険を想像するかで、理系/文系と分類することができる。

問題は、その分類にはなんの意味もないことだ。

(また、すぐ気付くことであるが、人間精神における想像力の異なるありようを想像する想像力は、上記2つにあてはまらない思弁的想像力というもので、これは文理に分離すれば文に相当することになるが、叙述的想像力とはまたまったく異なるものだ)


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