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そろそろ前回(まだこちらに来る前)の予防接種から1年ということで、獣医さんに連れていくために久々にネコバッグを出して、ファスナーを開けておいたら、さっそく中に入って神妙な顔をしている。
(ドーム式というらしいが、細長の両端がファスナーで止まる蓋になっている仕組みのバッグなのだ。蓋を開けるとちょっとした洞窟みたいになるので中に入りたくなるらしい)
しめしめとファスナーを閉めると、おっとり刀で黒がやってきた。中に入ったのは好奇心の塊の黒で、臆病者の白だとは思ってもいなかった。で、ファスナーを外すと、黒が無理矢理中に入ろうとして、窮屈になった白が出て来た。しめしめとファスナーを閉めて、出発した。
ところが200mくらい歩いたあたりで、いつものプープーという声ではなく、ニャーニャーという声で黒が大騒ぎを始めたので驚いた。ちゃんとイメージ通りの猫の鳴き声も出せるんだ。どうやら、以前避妊手術に連れて行って開腹されたことを思い出したのかも知れない。暴れるわけではないが、とにかくニャーニャー、かってないほど猫っぽい鳴き方をし続ける。
困ってしまって、顔の高さに近づけてへらへらして見せたりすると鳴き止むのだが、動き出すとまたニャーニャー始まる。妻に電話して助けを求めて(網から見知った顔がいつも見えてれば安心するだろうから、とりあえず来てくれ)、とにかく先へ進む。
蓋は両端からファスナーの持ち手を寄せるタイプなのだが、ふと気づくと、ちゃんと合っていなくて10cmくらい空いていた。全体的な位置からは、その程度空いていてもネコが落ちることはないだろうが、危ないことは危ないのでちゃんと閉めたら、不思議、その瞬間から鳴き声がぴたっと止まった。まさか、ちゃんと閉めろと叫んでいたってことはないよなぁ。
で、その後は普通に予防接種を受けるのだが、注射されても平気な顔をしているので不思議になった。もっと嫌がって抵抗するのかと思った。
すると獣医さんいわく、猫が騒ぐのは驚いたときで、痛いのは我慢するから、それを利用した注射方法なのだと、説明してくれた。
本当は痛さが長引くので良いかどうかは微妙だけど、まず少しだけゆっくりと刺して、ネコが平静を装うようなら、今度はじわじわと奥へ刺していくと(痛いのが長引くはずだが驚かないので)ネコは騒がない。これが人間相手のようにちょっとちくっとするけどすぐ終る、というやり方をするとネコは驚いて騒ぐんだよね、で、飼い主さんの気持ちを考えるとギャーと猫が騒ぐよりは平然としているほうが良いわけで、それもあってこういう注射方法は開業術なんだ、とのこと。
帰りは蓋がちゃんとしまっているからか、あるいは妻の顔がいつも見えるからか、おとなしくしていた。
で、家について蓋を開けると黒が出るより早く白が無理矢理入ろうとする。これは大騒ぎになるかと思うと、二人で出てきて(黒に押されて白も後ずさりで出てきて)、出終わったところで白が黒の顔をぺろぺろし始めた。会いたかったよー、ちゃんと帰れて良かったねということなのかな?
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