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たださんの日記を見ているうちに、『サンリオ文庫を買い占めておけば、いまごろ大金持ちですわ(ないない)』というセリフにぶち当たり、思い出したくもない不愉快な言いぐさを思い出した。
ある日のこと、といってももう30年近く前のことだが、神保町をぶらぶらしていて、何気なく古本屋に入って目の玉が飛び出した。
おれが持っているサンリオ文庫のディック短編集4冊組(だと思うんだけど、違うかも)が、8000円だか12000円だかで売っているじゃないか。
待て待て、ここは古本屋で、おれは暗記するほど読んだから(当時。今でも覚えているのはありそうだが、トリガーがないと思いだせない)もう売ってもいいし、仮にこの本屋がマージンを50%取っているとしても5000円くらいになりそうじゃん。よし、売ろう。
ところが、店番のおやじの雰囲気がどうもあまり感じが良くない。悪い予感がしたともいえるが、いきなり家に帰ってサンリオ文庫をがしがし持って来て全部で1000円とか言われる可能性も考慮して(他にもジャリの馬的思考とか、バロウズのノヴァ急行とか、ラーオ博士のサーカスとかいろいろ持ってたが、当時としてもなかなか読めない作品の数々を積極的に翻訳しているのは良いけれどどうも不思議な翻訳が相当あったように思う。ただサキの短編集は創土社のやつよりむしろ良訳だったような記憶がある)、とりあえず聞いてみるかと、「サンリオのディックの~と~と~と(結構たくさん)持ってるけど、いくらくらいで買ってもらえるんですか?」
すると、おやじは一言吐き捨てた。
「文庫は1冊5円(10円だったかも)」(追記:思い出は美化されている可能性があるなぁと思い返す。10冊につき1円とか言われたような気がしてきたぞ)
「ええ?」
あまりの落差に驚いて聞き返すと、死ぬほど面倒くさそうな顔をして、
「文庫は文庫だJK(みたいな言い方)、へんへん」
と、鼻息ふんふんものでさらに吐き捨てられた。
というわけで、二度と来るかと後にしたのだった。
まあ在庫リスクがあるところまでは認めるにしても、その店は割とSFが多めだったから、文庫は文庫だみたいな言い方を思いっきり不愉快にするとは思わなかったので、魂消た。扱うジャンルのファンを大事にしない本屋は見たことがない。で、なぜか店の名前が平井なんとかだったのは記憶してしまった。
それから数年、唐沢兄弟のマンガを読んでいたらSF作家の親類がやっている悪名高きH書店というセリフが出てきて、ああああああ、あれか! とえらく納得して、それからしばらくの間は唐沢兄弟の言い分をわりと信用していた時期もあった。
それからさらに数年して、そのあたりを通ったときに、もしかしてディックが売れ残っているんじゃないかと興味しんしんで見てみたら店ごとなくなっていた。
アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)(フィリップ・K・ディック)
(ディックについては以前の翻訳も悪いものではなかったと思うが、今のほうがきっと良い訳なのだろうなぁ)
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