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3/7は、神奈川県民ホールで、錦織オペラで後宮からの逃走。
神奈川県民ホールって、イメージでは森の中の瀟洒な洋館風のホールをイメージしていたのだが、あまりにも想像と違ってがっかりした。
だいたい、場所がわからないのでホームページを調べたら、NHKホールを真似して作ったとか堂々と書いていて、なんでそんなところでオペラをやるんだ? と思う。子供もこれはひどいとか言って、結局、神奈川県民の紅白歌合戦に特化したのではないかと結論した。NHKホールは、とにかく収容人数が3500人とばかでかいので呼び屋がペイしやすいくて大物に使われるが、2階と3階が洞窟になっていて、PCの中音域しか出ないスピーカーをさらにくぐもらせたようなろくでもない音しか出ない最悪のホールなので、なぜ真似するのかさっぱりわからない(東京文化会館1階の奥も同じようなものだが)。ただし、3F正面の最奥は逆に良く音が通ってむしろ悪くなかったりする。
どちらにしても、神奈川の県民性が良く表れているわい(2流の東京という印象)と、出かけることにした。
ところが、東横線にたどり着けない。気付くとヒカリエに向かっている。おかしい。→の通りに進んだはずなのに。で、初めて、渋谷ダンジョンにはまったことを知る。工事していることと、長年の銀座線を降りて左へ行けば東横線ホームという根深い認知(とっくに副都心線になっていることが欠落する)が原因だ。そこで副都心線だと判明すれば後は問題なくオームの中をくぐってモスクワの地下鉄みたいに広大な地下空間へ入って落ち着く。
で、往復して、神奈川県民ホールは、へたすれば上野や初台よりも、おれにはアクセスしやすいことがわかって相当驚いた。
NHKホールの真似は、あまりにも規模が小さいワールドスクウェアクラスのホールなので、あまり問題なかった。
それにしても、いきなり台詞が日本語なのには閉口した。正確ではない。レシタティーボではなく台詞なのだから日本語なのは問題ない。なんというか、オーペラふう(ふうは一息に発声)のぉセーリフまーわしがきも(「わ」から「も」までが一息)ちーわーるいのだ(るからだまで一息)。なんで、普通の抑揚でセリフを通せないのかな?
ところが、子供に言わせると、劇団四季とか観るので演劇の抑揚には慣れているから平気だという。
演劇はこんな抑揚では話さないだろ? と不思議に思ったが、そうか、紅テントとかに親しんでいたから、比較的に普通の抑揚がおれには当然でも一般論としてはちーがうのかぁ(うからかまで一息)。
そういえば、日本語ロックといえば、my guitarをおーりぇのギツァーみたいな抑揚で発音するのが普通なのにブルーハーツは普通におれのギターと歌うなぁとか、そもそも後宮からの逃走ってのはデビュー当時の頭脳警察みたいな、本国の言葉を海外の音楽の節回しに乗せた超実験作なんだよなぁとか、ということは、ブルーハーツってのは、ウェーバーみたいなものかなぁとか、いろいろ考えて楽しむ。
ペドリロ役の高柳圭という人が、日本人テノール風(なんか鼻にかかる)妙な歌い方からフリーで、とても良いということで子供と意見が一致する。それとは別にどうも、こういう顔でこういう演技のこういう役回りを最近見たなぁとか思っていろいろ考えたらメトのメリーウィドウのニェーグシュ役の人だなと思い当る。
休憩時間にプログラムを買ったら、表紙の画にどうも見覚えがある。天野喜孝だ。しかし、物語をまったく知らずに適当に書いたように見える。登場人物の中で最も賢明で冷静で健康的なカリフが、まるでジェファーのような書かれ方だ。顔色が土気色で頬がこけているからかな? 物語とはまるで逆にコンスタンツェをカリフが誘拐しているかのようだ。
最後、カリフの大演説が長い長い。こんなに長かったかなぁと思いながら聴いていて、そうか、どこかで憎悪を寛容に変える必要があるとイスラム教国の人間がキリスト教国の人間に説教を垂れるというのは、まさに今日的な問題で、おそらくそれを意識して後宮からの逃走を上演することにしたのだな、と思い当る(深読みなだけかも知れないが)。
それにしても、その後、新教対カトリックの大バトルを海上で繰り広げることになるのに、スペイン人貴族の息子の婚約者の船にイギリス人の家来が乗ってイスラム教国の太守(先日、十字軍(だと思っていたが、どうもレコンキスタのことだろうな)に恋人だか妻だかを含む領民を大虐殺されて、財産を大量に略奪された)のところにいるという話をウィーン皇帝の依頼によってオーストリア人の作曲家がドイツ語でしかし主人公たちの名前はどうみてもイタリア人名でトルコ風音楽を取り入れて書くという多国籍っぷりがおもしろい。
後宮からは誘拐されたのであるはおもしろかった。確かに、正当な対価を払って所有したと考えている人のところから奪取するんだから、誘拐が正しいな。
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