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日々の破片

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2015-03-30

_ ジェフ・ベゾス果てなき野望を読んだ

電車の中で読む果てなき野望だが2週間近くかかった。Kindleだから気付かなかったが紙だと500ページを越えている大冊だったのか。

実におもしろかった。

ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者(ブラッド・ストーン)

ベゾスってなんなのか知らなかったが、金融工学系の証券会社の技術者上がりだったのか(子供の頃は英才教育プログラムを受けて、幼児の頃はここでも出てくるモンテソーリだ)。

要約すればこうなる。流通業で成功するには、どれだけ薄利にできるかだ。どこよりも安く仕入れ、どこよりも安く物流を維持し、どこよりも安く配送する。人件費も施設費も安く上げる。そうすればどこよりも安く売れる。しかも薄利であれば薄利であるほど、賢い人たちはこの業界へは参入しない。敵はバカだけだ(もちろんウォルマートやCOSTCOはバカではない)。安く売れば消費者は喜ぶ。結局顧客満足を向上させることは安く売ることで安く売ることは敵を減らすことだ。単純なことだ。

そのためには、どのように仕入れ体制を作り、物流を構築するか。配送料を無コストにするというのは不可能なことだ。しかし、他のコストが浮いた分で補えば、消費者へは配送料を無料にすることもできる。

人材についても同じようにやる。誰が最も効率的な物流網を構築できる? ウォルマートの物流のディレクターだ。ではヘッドハントだ。誰が最大効率の仕入れができる? ウォルマートの仕入れディレクターだ。ではヘッドハントだ。誰が玩具の仕入れセンスが鋭い? トイザらスの仕入れディレクターだ。ではヘッドハントだ。

流通業で重要なのは、顧客が買いたい商品を買いたい金額より低い価格で売る(かつ利益を得る)ことだ。

売れる商品はどうやって調べることができるか? マーケットプレイスだ。

マーケットプレイスに必要なものは? プラットフォームと集客能力があるページだ。アマゾンで最も集客能力があるのは、アマゾン評が載ったアマゾンの製品ページだ。ではマーケットプレイスの商品もそこに並べよう(当然、社内でブーイングが出る)。問題ない。売れる商品なら、出品者の価格の謎を調べ、それより安く売れば良い。

低価格商品はどうやれば調べられるか? 安売りで有名な店舗のHTMLのスクレイピングだ。

というような、AするためにはB、BするためにはC、CするためにはDの連鎖がぽんぽん凄い勢いで出てきて進軍していく。ドットコムバブル崩壊だの、すさまじいブラック企業(エアコン代をけちって救急車で運ばれる作業員が続出したためついに州当局から警告されたりというような作業環境もブラックなら、社員同士の競争させかたが下品で、ベゾスの態度もよろしくなく(途中で変わろうとするエピソードが興味深い)、給料が異様に低い、繁忙期には幹部も倉庫で出荷作業を徹夜でさせられる(ある時期までは))っぷりに従業員がどんどんやめていったりだの、リーマンショックだの次々と問題が巻き起こるが、自転車操業で乗り切りながら邁進していく(赤字を垂れ流しているのに、破綻しないのは、売り上げが巨額で資金繰りが間に合っているからだろう)。

あまりに長いので途中、ベゾスの家族関係(結構奇妙な職業歴の実の父親と、なかなか数奇な人生をたどっている育ての父親、超ヤンママだった(でも教養に乏しいわけではなさそうな)母親)がえんえんと入ったりするが、課題とその解決の繰り返しでそれがなかなかおもしろい。

というか、超薄利なので賢い人たち(グーグルとかアップルとかマイクロソフトとか)は参入しないだろうなんていう発想があるとは(後付けなんじゃないか?)想像もできなかった。恐ろしいやつだなぁ。しかも、どれだけ安く売ってもそれより安いことがあるウォルマートやCOTSCOがあり、どれだけ叩き潰しても路面店に一定以上の需要がある限り、独占禁止法でやられる心配もないわけだからうまく作ってあるように思える。

ザッポスと読んだ先から名前忘れた赤ちゃん用品の通販会社(すごく感じが良くて、読者としては判官贔屓することになる)に赤字攻撃をかけて(肉を自分で切りまくって相手の骨を断つというか)手を挙げたところを買収するところとか、多分野で商売しないとアマゾンに食われるということが良くわかっておっかない(単分野だがアマゾンのほうが先を進んでいる場合は、敵つまりバーンズアンドノーブルは単に踏みつぶす対象だというだけだが、自社よりも仕入れ能力があり、商品を目利きでき、顧客を売り上げ10億ドル単位で握った単分野の企業は、赤字攻撃で降参させて(しょせん価格の安勝高敗な世界)異様に低価格で買収する。低価格で買収というところがすごく、正義の第三者視点の読者としては気分が悪い)。

では、どうやればアマゾンを倒せるのだろう? アマゾンよりも薄利で多分野多売をするか(相当難しいはず)、単分野ならばアマゾンの低価格を無視するほどにロイヤリティが異様に高い顧客を掴むか(それがiTSかなとふと思ったが、アマゾンは本気で戦ってはいないはずというか、アップルはiTSだけで商売しているわけではないから違うか)、いろいろ思考実験をしてみる。

その他のなかなか興味深いエピソード。最初は人間の編集者と執筆者が商品を紹介していた。−アルゴリズムでお勧めするほうが低コスト高リターンとなったので人間は解雇。ーアルゴリズムが不適切なお勧めをするようになったので人間を再導入。人間とプログラム(を作るプログラマー)の社内抗争がしょっちゅう勃発している。

特に、コストを削減するために2004年頃からどんどんプログラムで解決していくところが、(もちろん技術書ではないので、具体的なことは何も書いていないけど)、おれには実に刺激的だった。

課題解決が多岐にわたっているだけにこのタイプの本としてはウォズやグーグルの本よりおもしろかった(ジョブズの本はma2のマンガしか読んでないので知らない)。

B00LUGULIO

(これはこれでおもしろい)

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ holypp (2015-04-01 22:20)

とても興味深く拝見しました。<br>細かいんですが、タイトルが「ヘ゜」ゾスになってます。

_ arton (2015-04-02 06:23)

ありがとうございます!「ペ」だと思い込んでいました(でも「ベ」と書いているところもあるので何がなんだか)。頭の中の辞書ともども直しました。


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