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日々の破片

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2015-06-06

_ エロゲの太陽がおもしろい(経由、柳沢きみおは本当に偉かったのではないか)

なんかtwitterでマンガの2ページ分がやたらとRTされていて、その内容に誠を感じた(わけわからん表現だがそんな感じ)うえに絵柄が洗練されていて嫌いではないので興味を惹かれて読みたくなった。

で、それが何か訊いてみたら@yotii23がエロゲの太陽だと教えてくれたので早速買って読んだ。で、2巻(そのときは出ていなかったが予約したら先日配本された。電子書籍の良い点だなぁ)も今日読んだ。えらくおもしろい。

RTされている企画会議のページから推測したとおり、おれの分類上、職業紹介マンガ(古いところでは包丁人うんたらとか、大工のなんちゃらさんとか、鈴木みそマンガとか)で、もともと自分の知らない(でもそれなりのクリエイティビティがある)業界話は興味があるし、絵柄が好みのタイプならば、つまらないわけがない。もっともソシャゲマンガだと思っていたら題からしてエロゲだったのにはたまげたが。

で、題名通りエロゲ業界のマンガなわけだが、設定そのものがエロゲのコンテキストになっている(と思う)メタ化もきいているし、単純化の手法も悪くないので実に楽しめる(扱う業界はエロだが、内容と表現はむしろ子供でもOKな書き方なのが逆に興味深い)。

エロゲの太陽(1) (ビッグコミックス)(はまむらとしきり)

作者(原作のほう)は、巻末マンガやしょっちゅう出てくる説明文(白戸三平メソッドというか)によれば、まさにエロゲ制作会社を経営して倒産させたその業界の人らしい。倒産させたということは、いろいろ事情はあるだろうが、その業界での成功者ではなく(意外とその業界の成功者の描く業界描写というのはつまらないので、これは良いポイント)、後始末のあれこれを考えればいやな面も知っているわけで、物語上はきれいごとが並んでいても想像の余地もあるのもおもしろいところだ。

主人公は太陽という名前で(なんとストレートなタイトルなのだ)、頭が切れて(多分設定上は)イケメンかつ長身でしかも努力家というナイスガイな超人だが、前職でどえらくひどい目にあって、たまたまエロゲ業界に身を寄せることになったという設定(冒頭、あっという間にそこまで持っていく)。

で身を寄せることになったエロゲ制作会社が女性社員しかいない(しかも全員、性格やら態度やらになんらかの偏りがあるが、かわいい)。なんとひどい設定だ(ネガティブな評価ではない)。

物語は、順に社内の経営者、絵師、脚本作家、スクリプトライター、音屋(2巻の今はここ)に焦点を当てて、その周辺を取り巻く外部の人間(通常は敵)によって事件が発生して(というか、ソフトウェア開発である以上は、普通に進捗そのものが事件でもある)とゴタゴタがあってそれを太陽が持ち前の才覚で解決して男を上げるという仕組みになっている。(と、客観的に書くと実にくだらないが、でもここが仕掛けとしてうまいところである)

事件としては、業界(いや、それはエロゲに限らずアニメだろうが、そもそもソフトウェア開発そのものにもある)の黒っぽい体質問題やら、(これは知らなかったので興味深かった)企画-発注-開発-製造-販売までのチャネリングやら、あたりまえだがバグだの(絵もあり音もあるので、デバッグもこちらの世界とはずいぶんと違って興味津々)バグだのバグだのがあって、特にバグにはおもしろさ100倍増くらいに身につまされておもしろい。


で、ふと、主人公のまわりに大量に(性格と容姿が異なる)女性を配置するというエロゲ設定って、マンガの世界で最初にやったのは誰だろう? と疑問を持った。(1人や2人の間で揺れ動くというようなパターンはおいておくとして)

まあ、大人の世界なので、小説では昔からある。主人公のイケメン超人忍者の回りにくノ一やらお姫様やらを山ほどもってくれば山田風太郎だ。というか、紅楼夢には12人の美少女が出てくるし、源氏物語はもっと多い。実用目的なら明代の金瓶梅が確か6人くらい奥さんがいて、さらにいろいろ手を出したような(読んでないのでわからん)。

柳生忍法帖 上 山田風太郎忍法帖(9) (講談社文庫)(山田風太郎)

(柳生十兵衛は強いのだ)

金瓶梅 1 (岩波文庫 赤 14-1)(笑笑生)

すると、柳澤きみおの女だらけではないかと思い当った。まあ主人公含めて全員兄弟だが、それは当時の表現の上限のための歯止めを作っておくための設定だろう。6人兄弟の上5人が全員それぞれ個性が異なる女性だ。

それまで、1人(ドラエモンのしずかちゃんを想像すれば良い)か2人(明日のジョーの白木葉子と林紀子とか、普通はそんなものだ)だったのが、いきなりたくさん出て来た。

ラブコメというジャンルを作ったこともあわせて、柳澤きみおってえらく革新的な人だなぁと感心したのだった。

5人といえば、吾妻ひでおのふたりと5人というのもあったが、あれは容姿が同じというわけのわからない設定だった。


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