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子供が借りてきて一緒に見ようというので見た。
50年代のミュージカルといえばMGMは見まくっている(ザッツエンターテインメントの影響が大きい)が20世紀フォックスは見たことないなぁというわけで初見。
すごくおもしろくて、適当に流し見するつもりが完全に見てしまった(でも間奏曲――おもしろい映画の作りで、序曲、間奏曲、後奏曲が流れる。フォックスのタイトルロゴすら序曲の後に流れる仕組みだ。後奏曲は今なら延々とスタッフクレジットが流れるはずが、昔の映画だからMusic To Exitの文字がただ映っているだけ――はちょっと退屈でまじめに観なかった)。
なるほどユルブリナーはすばらしい。目をギョロギョロさせたり口元に笑みを作ったりするだけで立派な映画になる。優れた映画役者の一番の武器ははにかみだと思うのだが(例:勝新太郎、田宮二郎、石原裕次郎、ウィリアムホールデン、クリントイーストウッド)、この人も素晴らしい。特に最初に子供を次々と紹介するシーンで、ここがあまりに素晴らしいので真剣に観るモードになったのだった。
雇われ外国人教師役のデボラカーも良い。
時代は南北戦争期(1861~1865と今あらためて確認すると、ペリルが開国させたのにその後日本にアメリカがほとんど介入しなかったのは、しなかったのではなく、国内政治が忙しすぎて日本に手が回らなかっただけなのかな? と思った)なのだが(王様がリンカーンに手紙を書くシーンがある)、デボラカーが持ち出した地図がむちゃくちゃだ。
最初、シャムを中心にやたらとどでかく書いた世界地図を見て王妃たちがシャムがどれだけ強国かビルマ(当時だから良いだろう)と比較して大騒ぎするので、デボラカーがまともな縮尺の世界地図に変えるのだが、この地図が微妙で目をひいた。
当然のように、日本に眼がいくのだが、満州が領土になっているし、中国が満州を含めて4分割(色としては3)されている。はて、これは1930~1940年代の地図ではなかろうか? 時代考証がいい加減で頭がちょっとくらついた。
満州以外の水平3分割は、真ん中の南京政府(日本の傀儡で、フランスのヴィシー政権みたいなものだ)、南の重慶政府(国民党政府)はわかるとして、満州と南京の間はなんだろう? 延安政府の支配地域にしてはでか過ぎる気がするのだが。
と子供と話していると、子供はヨーロッパがおかしいと言い出す。いや、満州があるということは、ドイツ第三帝国が薄い緑だとしたら何もおかしかないぞと教える。まずポーランドという国は存在しない。それにしてもノルウェーがでか過ぎる気がしたがそれはメルカトル図法だからだなと今気づいた。
イギリス人に野蛮人ではないことを証明しようと、夫人たちに西洋風のドレスを着せて、ナイフとフォークを用意して……とやっているところを見て、鹿鳴館外交みたいだなぁと思ったりしながら、いろいろ楽しめた。
でもそういう枝葉もおもしろいが、なんといっても映画としておもしろかった。
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