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日曜はNHKホールで英国ロイヤル歌劇場のドンジョヴァンニ。
生ジョイスディドナートを観て聴くのを楽しみに行ったわけだが、NHKホールの3階の奥では歌手そのものをちゃんと見られるわけがない(舞台は良く見えるが)。
演出は回転する館(だったり森だったりいろいろする建物)にプロジェクションマッピングを使ったもので、子供が買ってきたDVDで観たことがあった。ごてごてし過ぎず、好きな演出だ。農民武装集団が洗練されているのがおもしろい(が、マゼットが田舎やくざみたいな風体なので違和感はない)。
最後は、アニマルハウスみたいな各位のその後を述べる部分をばっさり切ってドンジョヴァンニが苦悶しているところに合唱が入る。
地獄に落ちるのではなく昇天するようにも見える。それはそれで良いことだ。
騎士隊長が登場する前後でレオポッロが壁抜け男のように壁に溶け込むのもおもしろい。
ドンジョヴァンニのダルカンジェロは落ち着いた感じで悪くない。エルヴィーラの侍女を誘惑するところでは英国ロイヤルで良くみかける全裸演出だが、日本なので下半身は影で覆われている(多分肉色レオタードかなにかも着せているのだろうな)。少なくとも歌っているだけで全裸にさせるのだからドンジョヴァンニの魔力はまったく衰えていないという演出(ではなぜツェリーナには効力がないのかそれともあったのかは謎になるが、エルヴィーラの存在が影響しているという見方もできるのかな)。
声だけからは、ツェルリーナ役のユリア・レージネヴァが張りもあれば美しくもある歌で良かったし、ディドナートはもちろん悪くはないが考えてみればエルヴィーラよりもロッシーニの曲芸みたいな歌のほうが聴きたかった。
パッパーノはチェンバロをポロロロンと弾きながら指揮をしていたようだ(見えないが、指揮台にチェンバロが置いてあったから間違いなくそうだろう)。
序曲のテンポと後半の高いところで弦が鳴るところが美しくて、そのまま持続した。ところどころテンポが遅いかな(歌と合わないところがあった)と思わないでもないがうまいものはうまい。ドンナ・アンナの人は(そもそも曲が大して好きではないこともあるが)あまり印象に残っていない。ドンオクタヴィオがビリャゾンで声は良く通るがどうも地味だった(が、最初から退屈極まりなく、全員途中で退場してしまう2幕のやたらと長いアリアを、少なくとも最初の部分は興味深く聴けたからやはりうまいのではなかろうか。それにしてもやはり長過ぎるというのはモーツァルトが悪いわけだが)。
楽器編成といい、舞台といい、NHKホールのでっかな箱で観るよりも、もっとこじんまりとしたホールで観たかった。音は2階で聴くようなくぐもり感はないのだがやはり3階の奥は遠過ぎる。まるで音が良いテレビを観ているような感じでどうにも臨場感には欠けるのだ(小編成のオーケストラだということもありそうだ)。
モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》 K527[2DVDs](クヴィエチェン)
この演出(舞台装置)だ。レポレッロは同じアレックス・エスポージトという人。安定して楽しい演技の人だ。
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