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日々の破片

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2015-09-23

_ 黒衣の刺客

新宿ピカデリーで侯孝賢の黒衣の刺客。

いきなり説明。唐末期、辺境諸族からの侵略を防ぐため節度使を配したが、逆に節度使が地方軍閥化して易姓革命をうかがうに至った時代の物語である。魏博が舞台である。

白い服を着た女性が黒い服を着た女性に、悪徳役人を殺すように命じる。たやすいことである。馬の列が道を通る。森の中を黒衣の女性が進む。あっという間に首を掻き切って姿をくらます。役人はしばらく馬を進めて崩れ落ちる。風の音がする。背景に大きく揺れ動く木群。しかし手前の満開の花をつけた木は大して揺れていない。映画だ。

子供を遊ばせる偉そう服を着た男、妻、女中たちと幼い子供。蝶を子供が捕まえようとするので、握ってはだめだと教える男。蝶は手を逃れ、男の肩に止まり、高く飛んでいく。子供はがっかりする。マリ遊びをしよう。子供は左端へ消える(サイズがスタンダードだと気付く)、位置を直してマリ遊びが始まる。男が子供を抱いていると、布を幾重にもくぐって黒衣の女性が近づき、去っていく。男、刀を背中めがけて投げる。女性、振り向きざまに右手の刃物(妙な曲がり方をしている)で払いのけて去っていく。

白い服を着た女が技は良いが心がまだだというような説教を垂れる。従兄を殺せと言って追い出す。

はて、これはなんだ?

とみていると、母親(やはり大量に女中を侍らせているので金はありそうだ)のところに道士(とここで白い服の女性がわかる)が来て、娘を返すといって去る。

風呂の用意。

母親は琴を弾く。爪弾いてから弦を揺らしてうねらせる。

匈奴のもとに送られた夜鳴鳥(じゃなかったけど)の逸話を語る。映画の中で物語を語るのは好きだ。

と、徹頭徹尾映画で楽しい。

娘と男はともに、朝廷から魏博へ嫁いで来た公女から、朝廷と和を保つように壁を渡されたことが母親によって語られる。壁は決意の意味を持つ。公女は都から連れて来た家来を返し、財産を廃棄してこの地に溶け込もうとした。

男が魏博の節度使とわかる。また殺しに行く。が見ているだけで踵を返す。節度使剣を取って追う。屋根の上で戦う。勝負がついたところで殺しもせずに屋根から飛び降りて去っていく。寵姫(と後からわかる)が机の上に残された壁に気付く。戻って来た節度使へタイミングを計って渡す。節度使、自分の壁と比べて、あれは隠娘だ、と過去の因縁を寵姫へ語る。

公女から二人へ与えられた壁だ。元は婚約していたのだが、父が地元の豪族に取り入ることを考えて、婚約を破棄して豪族の娘と結婚したのだ。隠娘は鳳凰のように屋根から庭へ降りてきて衛兵に傷を負わされる。心配した両親が道士の元へ出したのだ。帰って来たのか。

節度使の前で他の2郡と組んで反朝廷側へ回るかどうかの会議となる。朝廷との和平を献策されると怒り出す。靴の先端のくるくるが印象的だ。

両親の家、父親が献策した男が左遷されることを話す。中風になったと話したところで治療中の姿となる。

節度使、父親を呼び出し、左遷先への護衛を命じる。生き埋めにはさせるな。

一方、正妻(とわかる)は部下から月経ではなく鶏の血だと報告を受ける(寵姫が妊娠したということだなとわかる)。部下へ、生き埋めの指示を出す(地元豪族の娘だからだなぁと政治事情がみえる)。

別の怪しげな道士の爺さんのところに地元勢がやって来て生き埋めの算段をして出発する。

馬で追いかける。待ち伏せに合うが、逆方向から回りこんだ追手の矢でばたばた倒れる。父親も背中に槍を受けて倒れる。

左遷された男の生き埋めが始まる。父親は立たされているから死んだわけではなさそうだ。

川で水を汲む男登場。

上にのぼり、生き埋めを止めようとして立ち回り。多勢に無勢で逃げ出す。逃げきれずに木に投げ剣で釘付けされたところで、隠娘登場。追手を倒す。

父親、薬をもらいながら道士の元へ送ったことについて何か愚痴を言う。

篳篥と笙の楽の音がする。日本の音楽だけどなぜここに出てくるんだ? 結婚式っぽい。

水汲み男、鏡を磨いて村人に見せる。水汲み男のフラッシュバックなのかなぁ。

(このあたりに異様に美しい、霧が回転する池の長いシーン)

戦闘。隠娘、仮面の女に襲われて戦う。仮面を叩き壊すが、背中に傷を負い、水汲み男に治療してもらう。

爺さんの道士、紙の人形に巫術を施す。水に浮かべると溶けて消える。

山の頂上から下界を見下ろす女の道士。隠娘がやってくる。戦う。隠娘逃げる。道士右手が血まみれなのを背中へ隠す。扇は左手に持ち替えている(それとも最初から左手だったかな)

廊下を歩く寵姫と女中たち。くらくらして柱を抱きかかえる。女中たちがやって来ると突然シューシュー煙が身体から立ち込める。逃げ出す女中たち。

庭からいきなり隠娘登場。寵姫に活を入れる。煙が止まる。そこへ節度使登場。戦いが始まる。隠娘、妊娠しているぞと告げて逃げ去る。

部下が人形を発見。公女が急死したときも同じものを見つけたと見せる。

軍隊が爺さんの家を襲って矢で打ち殺す。

山羊がたくさん木の柵の中で飼われている。

隠娘、馬を連れてやってくる。

水汲み男が約束を守ってくれたと踊り出す。新羅へ連れて行ってくれるんだ(雅楽も新羅あたりに源流はあるのだろうから、新羅の音楽だったのかな?)。2人で旅立つ。

おしまい(ちょっとあまりに遠景だったがゲルマンの神々の黄昏のラストを思い出した)。

え?

と、物語はほとんど説明がないので(物語内物語は、匈奴の鳥や、過去の因縁とか多少あるが)筋の流れがほとんどわからないが(寵姫のところや朝廷派と地方豪族の闘争のような旗色鮮明なものはわかるけど、節度使の内心とか、母親と公女の関係とかわからない点が多い。匈奴の鳥の話を映画で語っていたのは母親のようだが隠女の会話では公女のもののようだし、道士の立ち位置も悪徳役人の成敗という最初の暗殺以外はいまひとつ不明確、水汲み男に至ってはなんだかさっぱりわからない)、映画としては最初から最後までまったく弛緩もなければ退屈もなく、ひたすら怒涛のような映画でびっくりした。ここまでおもしろい映画は無い(ゴダールの3D映画ですら、これに比べればゆるゆるだ)。

映像はフィルムだと思うのだが、色を抜いてから再着色したような効果や、不思議な合成やいろいろ凝らしていて妙な美しさがある)

それにしてもこれはなんだろう? チェンカイコーの武侠映画(無極とか)にあてつけたのかなぁ?(単にその時点での流行の問題なのだろうが、娼館映画(海上花と花の影)、役者映画(戯夢人生と覇王別姫)とたまに競作のような状態になるのが興味深い)


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