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新国立劇場でマスネーのウェルテル。
今度はギャラリー席(2~4階の横向き1列の妙な席)。初めてのギャラリー席だが、一番舞台から遠いところだったので、左側はまったく見えないが(教会の入り口が見えないくらい)、逆にオーケストラや指揮者が見えてそれはそれでおもしろかった。
序曲の途中、静寂が訪れる前のあたりで金管の連中がぞろぞろ退出したのは驚いた。いくらしばらく出番がないとはいえ、オーケストラでも途中退席とかあるのだな。
と、1幕が終わった後の休憩時に子供に話したら、それは気づかなかったがプラッソンがジャンプしたと教えてくれた。ところが、おれは彼女が他の男のものになるなんてといいながらウェルテルが駆けていくところを見ていたから気づかなった。で、2幕の終わりになると、こんだエレートがイルレームとか言っているのを観ていたのでこれまた気づかず、3幕と4幕の間も全然気づかず、最後の最後に確かにジャンプして一振り、そこでお終いとやっと観ることができた。えらく外連味がある指揮者だ(序曲のメリハリで、そういう音楽性の持ち主というのはわかっていたが、身振りがジャンプ交じりとは知らなかった)。
どうにも不思議な作劇だなと2回きちんと観て考える。
1幕の終わりではウェルテルは彼女が他の男のものになる(ご丁寧に2幕の頭でも繰り返す)という妄念で頭がいっぱい、2幕の終わりではアルベールが彼は彼女を愛している(では彼女はどうなんだ?)という妄念で頭がいっぱい、3幕では手紙をしつこく読みながらシャルロットはウェルテルで頭がいっぱい、誰一人として幸福ではなさそうだ(2幕の途中まではそれでもアルベールとシャルロットは不幸ではなさそうだが)。この作りだと3幕の最後でたぶんシャルロットが何か口走るような気がするが、覚えてない。とすると、そういう危ういバランスを崩すことになったのは、シャルロットがウェルテルを遠ざけたことが原因としかならない。(さらにさかのぼると、母親の遺言だからと(たぶん、あの親父はウェルテルを評価しているからどうとでもなったようにみえる)頑なにアルベールに執着したシャルロットに原因があるように読めるし、どうもマスネーのウェルテルはシャルロットの扱いがよろしくない。
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