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日々の破片

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2018-05-12

_ 怪奇小説日和

MA2さんがFBでおもしろがっていたから、おれも買って読んでみた。ちくまもさっさと電子書籍出せ。

英国の20世紀初頭を中心とした怪奇小説(幽霊譚からサイコキラーものまでいろいろ)を集めているが、抜群なのはドン・ファン・グスマン・デル・プルガル、ミラモルの伯爵の永久墳墓での冒険を描いた七短剣の聖女(ヴァーノン・リーという人が書いた)だ。豪華絢爛な描写(いちいちドン・ファン・グスマン・デル・プルガル。ミラモルの伯爵と主人公の主語を書くところも含めて)が圧倒的に楽しい(というか、おれは人口楽園の描写が好きなんだな、と、先日観た空海の極楽の宴もすごく好きだったし、江戸川乱歩の末裔なのだろうか)し、最後の謎にどう答えるかのサスペンスといい、素晴らしい。この作品に比べてしまうと、ダポンテ・モーツァルトも相当にかすんでしまう(が、エルビーダが出てくるのでそこはおお、おなじみの名前だ、と楽しい。というか、ドンナアンナの名前が出てこないので、ドンナアンナと騎士長を巡る物語が始まるのかと思ったら、全然違った)。

列車もおもしろい。1950年初頭か終戦直後だと思うが、女性二人の微妙なハイカーの物語。最後、翻訳の問題かあるいは作者の曖昧描写のせいかはわからないが、2種類に解釈できる言葉が出て来るので(多分、婚約側だとは思うのだが)解釈は難しいが、そもそもはヘンリージェイムズのお国柄だ、すべては解釈できず、すべてを知ることもできない、ので、それで良いのだろう。という点からは陽気なる魂が抜群におもしろい(短いのもあって5回読み返したが、全然わからん。最初は輪廻するというか館にとらわれる物語かと思ったが、そうではなく立場の変化に過ぎないような気がしているし、単なる誤解の物語のような気もする)。もしかすると、加齢によって読解力が落ちたのかも知れない。その分、何度でも解釈し直せるので楽しいとも言える。

ターンヘルムはできの悪いヴァグナーみたいだが、ミーメの役回りがぷくぷくした感じが良い人で、ハグリットそっくり(というか、性格、容姿、行動、どう読んでもハグリットなので、ローリングがハリーポッターを書くにあたって引用したとしか思えない)なスティーブンスがおもしろかった。というか、ハリーポッターの原型に読めるんだよなぁどうあっても。

というわけで、英国人は気分が悪い連中で、怪奇小説を書かせたら世界でもっともうまい連中なのは間違いない(創元文庫の5冊組を読んで確信したことを再確認した)。

怪奇小説日和: 黄金時代傑作選 (ちくま文庫 に 13-2)(西崎 憲)

#1番の怪奇は、同じオチの作品があると書いてある解説で、どれだかわからない。多分。


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