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日々の破片

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2018-06-06

_ サンドリヨン

東劇でメロライブビューイングのサンドリヨン。

これでマスネはマノンウェルテルに続いて3作を劇場版で観たことになる。

・最初ウェルテルを思い出せなかった。

始まると妙に繊細な音楽でメロディーがあまりなく、不可思議な印象を持つ。

振り付けは妙にぴょこぴょこしていて現実感がない(お伽噺だからだろう)。とはいえ、父親とサンドリヨンの2人は比較的リアリティがある。

父親の娘がかわいそうだという歌が白々しいような真剣なような違和感でどう受け取るべきなのか? と疑問を持っているうちに終わってしまう。

妖精の女王のキムが出てきて(なるほど、ほとんど出ずっぱりの良い役だ)技巧を凝らした歌を歌うのだが、やはり音楽の奇妙さを変わらない。

極端に舞台奥を狭めることで遠近感を狂わした舞台装置のため、椅子に座る王子が小人のように見える。孤独感を示しているのかな。

ネズミはサンドリヨンと同じ風体。

宮廷の官僚たちの動きが奇抜過ぎて笑えない。

違和感を持ったたまま幕間。(各2場の2幕構成か、1幕30分程度の4幕構成のどちらか)

幕間インタビューでビリーが、マスネといえばマノンとウェルテルだ。サンドリヨンは1899年の作品でこれら2作のあとに作られた。コメディだ。ベルディは最後にファルスタッフを作った、と語る。

なるほど、時代(ほとんど20世紀)と隣国の偉大なオペラ作家から多大な影響を受けたのだろうと考える。

もう1つビリーが言っていたのでなるほどと思ったのは、(少なくとも幕間前までは)すべての歌が途中で終わってしまい、すぐに別の心情を歌う違う登場人物となるという点。とはいっても紙芝居というわけではなく、明らかに何か客が感情移入しないで遠目に舞台を観られるようにわざと仕組んでいるように思える。リアリズムを排しているのだ。

2幕、サンドリヨンを探す王子と一人で家を出たサンドリヨン(母と姉妹から、王子が謎の女のことを怒っていたと吹き込まれたからだ)が妖精の女王が作ったお互いを見えなくする壁によって、互いの偽りのない心情を知り、世にも美しい2重唱を歌う。なーんだ、マスネはマスネだった。すばらしいメロディメイカーだ。が、オーケストレーションはあくまでも薄く、バイオリンのソロを多用して甘美な味わいを作り出しすぎる。

サンドリヨンが家を出る前、妻と姉妹を叱り飛ばした父親が美しい歌を歌う。野心のために娘を犠牲にした。二人で森の奥の家に帰ろう。

(なんか先週観たルイザミラーみたいな展開だ)

が、結局、サンドリヨンは一人で抜け出したのだった。

場面転換後、最初ビリーが両手素手で指揮を始める。???と思いながら観ているとカメラがオーケストラに切り替わり、戻ってくるといつもの指揮棒を持つビリーになっている。なんだったのだろう。

最後、当然のように靴になる(その前にすべては夢おちだったのかと嘆きまくる長い父と娘の歌が入る。サンドリヨンは川岸に倒れているところを父親に見つけられて、どうやら森の奥の家に戻ったらしい)。

母と姉妹の声がして、どうやら王子が靴の履きてを探しているらしきこと、病膏肓に入り死にかけていることがわかる。妖精さん出てきて! とサンドリヨンが叫び場面転換して王宮となる。チキンドレスなどが出て来るが、サンドリヨンが出てくるまでもそれなりに長い。出てくると、前の幕の終わりで大切にしまった片方の靴は全然利用されることなく、履いて終わる。

最後の最後に母親が出てきて、自慢の娘ですわ! と掌を返す。伯爵家の面目が躍如すれば結果良しということなのだろう。

父親が、お伽噺は終わった。といっておしまい。

・作曲前に道化師を観て、最近の若者はこういう作劇するのか、ではおれも真似してみるか、と考えたのではなかろうかとか思う。

すごく、微妙な作品だなぁと思うが、見えない壁が取り払われたあとの美しさは信じがたい。

サンドリヨンはディドナート、王子はクート、メゾメゾデュエットというのはすごいものだ。


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