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日々の破片

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2018-10-27

_ 太陽の塔の中を見る

妻がなにかでJR東海のパックツアーの太陽の塔の中を見るやつを見つけた。

太陽の塔の中は最近公開されたが、16人ずつしか階段を上らせないとか、要予約とかいろいろ面倒くさい。そのあたりをさくっとまとめて新幹線込のパックにしてあるので、それは良いということで申し込んだ。

新幹線で新大阪集合、あとは時間を潰すために(というか観光地にお金を落とさせるために)あべのハルカスとかいうビルでやっている太陽の塔に関連する展示とか、大阪城とか、Expo70パヴィリオン(?)とかの見学。オプションで京都一泊と夕方東京に戻る新幹線の切符というのがあって、そっちを選んだ。

あべのハルカスの展示では、初代の未来の顔(金色のひよこのやつ)とか、地下の祝祭空間に配置されていた金色の目だけの顔のレプリカなのか原型なのかとか、ノンとか腰掛けることを拒否する椅子とか、が置いてあって、巨大なもの以外は、青山の自宅とかでも観られなくはないが、やはりおもしろい。思い出したが入っていきなりは、多磨霊園にある父母を見つめる子供で、これ大好き。

それにしても、等身大岡本太郎が2体(太陽の塔の原型を作る姿、穴から向こうを覗く姿)あったりして、青山にもいたが、自分の存在自体を芸術活動にする姿勢には頭が下がる。

この展示が良いところは、完全撮影OKなところだが、その一方で、彫像と一緒に撮ろうとする人たちが大行列していて観るだけだと相当邪魔になることで、無視して横切れば良いのだろうが微妙なところだ。

展示を見て、最初地下から入り、原始からの人間芸術をくぐってから生命の樹に連なるストーリーがあることを思い出したか、初めて知ったか(初めてということはあり得ないが、というのは当時ニャロメの万博案内はもちろん、相当多数のカタログを読み漁った記憶があるからだ)で、そこは埋め潰されているので無しと書いてあってある意味おもしろい。祭りの後っぽい。

じゃんじゃん通りで行列ができている串カツ屋に並んで昼飯を食う。アスパラとか玉ねぎとかが意外とうまく、どんなんだろうと(素材的には好きそうで)期待していた土手焼き(焼きというが煮物)は今二つくらいだった。おれには味付けが甘過ぎる。

妻が上ったことが無いと言うので通天閣へ行く。なんか25年位前に来た時は劇場がくっついていたような記憶があるのだが、今はタワーだけが佇立していて地下から入るようになっている。お菓子屋がたくさん。エレベータを含めてすべてがゆっくりと買い物する以外にすることがないように仕向けられていておもしろい。ただ、それでも展望台に上ると相当人がいるので、どうも人数があまりたくさんにならないように調節をしまくっているのだな、と思う。並んでいる間に前にいた中国から来たらしき人がラブライブの平たい人形のガチャガチャをやっていて、なぜラブライブと不思議に思う。水色のやつが出て来ていた。エレベーターはどんどん昇るシルエットの演出で、おもしろくなくもない。

その後、じゃんじゃん通りをまた戻って、20年位前に同僚と探検したじゃんじゃん通りの先のガードくぐったあとの動物園通りのアーケードに多少入ったところで時間切れとなって戻った。以前来たときよりも、15年くらい前に見た山谷に風景が似ているように思った。

バスで移動。

大阪城はちゃんと入るのは初めてで、こんな機会でもなければ死ぬまで観ることはなかっただろうが、これも意外と楽しめた。虎の実物大のやつが中に展示されていたが、天守閣が庶民のための見世物でもあった織豊時代ってのは、なかなか優雅なものだなぁとか。

で、万博公園に移動。

記憶にあるのは、お祭り広場で雲のイメージではないだろうが、なんか水平に渡した板状の建造物から唐突に飛び出している太陽の塔なのだが、単純に聳え立っていると、それはそれで抜群におもしろい。

観ているだけで楽しいのはどうしようもなく凄いなぁ。

時間潰し用のExpo70パヴィリオンという訳の分からない建物に入って、2階へ上り、展示物の中に入った瞬間、記憶が突然よみがえり、これは鉄鋼館じゃないかと納得しまくる。鉄鋼でがちんがちんに作ったので取り壊すことが(多分コスト的に)できず、そのまま残されることになったというのが、こうやって残っていたのか。鳴り響く音楽はクセナキスでも高橋悠司でもなさそうな感じだが、わからないや。というか、音響は展示物ではないのだろうか?

当時のコンパニオン(なんちゃらエンジエルとか書いてあって、なんか思い出すものがいろいろ)の服とか、クレージュ風だったり(あるいはクレージュそのものかも)するのだが、展示のマネキンと映像とであまりの体型の差異に驚く。70年代から50年で本当にいろいろ変わるものだ。

住友は見た記憶があって、箱の中に赤ずきんが白黒で、犬猫は色彩を認識しないと書いてあったのではなかったっけ? とか、三菱は煙をスクリーンとしてサメを投影していたなぁとか。

しかし大混雑で入れなかった太陽の塔は今回が初回だ。

で、わくわくしながら地下への入り口から入る。

ガイドが1人つく仕組みになっていて、ちょっとおもしろい。

最初に地下の埋め潰された空間から「いのり」を縮小再現したコーナーへ進む。なんの説明もなしに数100の各地の神像が配置された中心に、目しかない巨大な顔がある空間というのはなんなのか。

大量に配することで個々の差異は意味を失って、人間のいのりという行為の普遍性を示すと同時に、中心となる本物の神は祈りを聞く耳もなければ語りかける口もない。しかし見てはいる、という森永のエンジェルみたいなことなのかなぁ。

いや、なんだかわからないが、ドーンとでっかな金色の顔のまわりにたくさんの神像を並べたかったのかも知れない。いずれにしても滅法おもしろい。

生命の樹にはおどろくほど感銘を受ける。おれは本当に岡本太郎が好きなんだなぁ。

音楽が、モダンな音響で、あれ? 誰だっけ(主要な作家は鉄鋼館に取られているし)と思ったら、黛敏郎と説明がある。あの極右民族主義者が、まだ出光に取り込まれる前の作品なんだろうか? 非常に明解な時代性を持つ音が心地よい。

その樹から降りたことがない首長竜がでかい。

最新の知見で修復とか書いてあるから恐竜に羽毛をはやすのかと思ったら、部分部分にLEDを入れて明度を増したりしたことをさすらしい。

ゴリラは壊れたままの頭部と脚部。

頭部は下から見ると帽子をかぶっているように広がって見えるのに、実際に近づくと逆に回りが取れて金属の三角がむき出しとなっている。膨張/縮小の不思議だ。

最後、両翼へ通じるワンバダというかタイムトンネル風というか、すさまじく不可思議な視覚効果を持つ空間を眺めて(上に続く太陽だか光だかの空間はいびつなだけに両翼ほどインパクトがなくて逆に不思議)裏に設けられた階段を使って下る。途中何点かパネルが置いてあって読んでいる最中はおもしろかったが、今思い出すと何が書いてあったか思い出せない。

30分という予定ぴったりの行程だった。

バスで京都へ移動。なんか観覧車が何度も何度も見えて、高速に乗るのに何周するのだろうか?

十条のはずれの鴨川近くのきれいで新しいが趣はまったくない観光ホテルに案内される。(趣はまったくないが、朝食は良かった)

歩いて伏見神社に行こうとして道を間違えて龍谷大学を外から見学するはめになったりしたが、最終的にはお稲荷さんについた。入り口の広い階段を上っているとネコがやってきて懐くのだがどうしようもないので無視。

本殿見て、裏の不思議なやつ(特に不思議なのは鳥居と賽銭箱はあるが、祠も何もなくて単に柵があるだけのやつで、山から妙なものが下りてくるのを防ぐためなんだろうか?)とか眺める。やたらと小さな鳥居を並べた祠で老婦人が二人一心不乱に般若心経を読経していて、なぜ神社で? と不思議に思う。

そしていよいよ1000本鳥居に向かう。19時くらいで、暗いも良いところ。

しかし暗いのだが、結構日本人だと思う言葉を話す人たちを含むアジア系の人たちでにぎわっている。

登り切ったところで、右側通行で帰り、1列になったところで矢印のほうへ行こうとするが真っ暗で道が見えない。妻にうながされて、気分悪いが一方通行の鳥居の中を逆行した。

帰りにさっきのネコが別の人たちに懐いていていかにも観光地のネコで可愛い。

さて、晩飯食おうとしたが、どこもやってない。

とりあえずホテルへ帰るかと、線路を越えて次の線路を越える手前ににぎわうラーメン屋があるが、ラーメンは食べたくない。そのはす向かいにこじゃれた飲み屋があったので、そこに入ることにした。

飲むのは好きではないが、飲み屋で飲まないのもなんか襟が立つ気がしないので、置いてある酒を聞いて伏見の酒だというから柳というのを頼み、他に適当に頼む。

冷酒で出てきたがこれがスッキリしていておいしい。これでアルコールが含まれていなければ最高なのだが、色と香りを再現するには、アルコールの揮発性が必要なんだろうか?

いさきの炙りお造りというのを頼んだのだが、なぜ炙り? と思ったら皮目が付いている。なるほど。これは良い趣向。岩ノリのピザとか不思議なものも頼んだが、これもおいしい。大体適度な鹹味でなるほど酒を飲ませる店っぽい趣向だなと思った。

と、相当おいしかった。良い店だ。

隣の席の客が主人と、スターバックスができるから観光客が来て伏見も変わるとか言っていて不思議になる。そもそもお稲荷さんがあるから観光客でいっぱいではないか。どうも、ナショナルブランドの店がほとんどない地域なのに、そのての均質化した気分悪いものが進出してくるのはいやだなぁという意味っぽい。まあ、今いる店みたいなのが心地よいのは事実だろうから、わからんでもない。

だらだら歩いてホテルに戻った。


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