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日々の破片

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2018-11-23

_ アラン・ロブ=グリエの不滅の女

イメージフォーラムでアラン・ロブ=グリエの不滅の女。

初見。

冒頭、地中海風の町が映り、女性のアップ、鎧戸から外を覗く男、鎧戸で女性の切り替わり、波止場か埠頭で釣りをする男。太ったこちらを監視する男。

1962年の作品とわかる。当然白黒だ。

抜群におもしろかった。もしかすると、ここ10年で観た中で最もおもしろかったかもしれない。

すぐに、複数の状態がモンタージュされることから去年マリエンバーグを想起する。アラン・レネの端正な映像よりは荒っぽいが、むしろおもしろい。

物語はどうも、次のいずれかの物語の組み合わせのようだ。

1) 絞殺魔がフランスからトルコに逃げて来て、ここで知り合った女性の首を絞めて殺す。海に捨てに行く。犯行がばれて逃走中に立木に衝突して死ぬ。

2) 言葉が通じない異国で孤独なフランス語教師が、たまたま誘った女性が来るのを窓際の鎧戸越しに外を眺めて待つ。待っている間に妄想に耽る。

3) 知り合った女性と逢瀬を続けるが、嫉妬深い彼女の夫にばれてしまう。彼女は隙をみて脱出して男と車で逃走しようとする。3-1) 女、夫の飼い犬にそっくりの犬を見て驚愕のあまり事故死。男は女の死を認められず彷徨する。3-2) 男、無理矢理ハンドルを奪って心中する。3-3)女は事故死するが男は助かる。しかし女の死を信じられずに同じようにドライブして事故死(または自殺)する。

4)孤独なフランス語教師が集まってくれた人を眺めて妄想に耽る。

5)木曜に何かがあったが、それが何かはわからない。

6)地下牢に女が閉じ込められているので救出する。

7)謎のトルコ人から買うが気に食わずに海に捨てる。

主な登場人物は、主人公のフランス人の教師。トルコ語はわからない。(映画ではトルコ語にはすべて字幕がつくので、わかっていないのは主人公だけ)

ニナリッチの服を着ている謎の女性(不滅の女ではなく、不死の女と訳すべきだ) チューリップ1号。主役。

謎の女性の夫かもしれない 1) 犬を2頭連れた太っちょ(事故の後は犬は1頭になる) 2) ラズロコバックスみたいな男。 どちらも黒いサングラス

謎のトルコ人。いつも道を歩いているが、女性を入手する相談に乗る

謎の子供。ギリシャ語またはトルコ語を話す。地下牢を案内する。

謎の子供と一緒にいる女性。フランス語で喋りかけるうっとうしい男を適当にあしらう。

下宿の3階にすむ女中(チューリップ2号)。1階で釣りをする男の関係者だが、男に対してはすべてを説明しない。

謎の釣り人。釣りをしている。左に釣り人、真ん中に魚の構図は素晴らしい(始まってわりとすぐだが、1度しかない)。太っちょのほうの亭主または父親または無関係の人またはフランス警察から依頼されて絞殺犯らしき男を見張っている警察官に対して、鎧戸はしまったままで男は不在だという映画を観ているこちらからは誤った情報をわざと与えているように見せる。

ネコ。坂道の右側の縁石の陰から出てくる。坂道(謎の子供と女性の家の前の道)を横切る。すごくかわいい。3匹くらいいる。

骨董屋。裸体像を売る。回収して再度売るか、または単なるイカサマ師でレプリカを売っているだけ。本筋とは関係ない。

モスクの前のお土産売り。女と夫、女と男のいずれの関係についても女をかばう側に立つ(買収されているからだ)

カトリーヌ。ロブ=グリエ。小柄。パーティで女と知り合いということになり、談笑していたように男にはシーンとして記憶されている。トルコには暗い面があることを知っているか、適当を言っているか、とにかくそこに住んでいる。実は何も知らない。

窓から女と男の行動を見張る異常な女。男が家に入ると階段の上からわけのわからないことを怒鳴りまくる。

それにしてもおもしろかった。

最初から最後までどのシーンもすべてがおもしろい。ずっと脳みそが刺激されまくっている。すげぇ気持ちよさ。

マリエンバードは日本でもそれなりに売れたんだから、公開されても少しもおかしくないのだが、なぜ無視されたのか不思議だ(アラン・レネと違ってプロフェッショナルな監督ではないから、配給会社のルートがなかった、とかかなあ)。しかし、途中から言葉の通じない異国での不安定極まりない恋愛状態という点から広島モナムールをずっと想起することになった。おれは、相当左岸派が好きなのかも知れない。

Alain Robbe-Grillet: Six Films 1963-1974(Alain Robbe-Grillet)

(これに収録されているみたいだが、1963~になっているなぁ。1962というのは記憶違いかも)

・首筋に回す手

・ベリーダンスと食い入るように眺める男たち

・室内でのベリーダンス

・ニナリッチ

・斜めの墓標群

・紛い物作成か修復か

・イチニンみたいな歌詞(音が印象的なので2回目もわかる)

・写真をめくっていくと女が映った写真が何枚も出てくる

・椅子を持ち出した、わたしはずっと立っているのに、椅子はなんのためにあると思っているんだ

・フランスから届いた手紙には何が書かれているのか。1枚は丸めて投げ捨てる

・ウェイウェイの映画の予告編で、全世界には6500万人の難民がいると出てきて、つまり100人に1人は難民なのか、と愕然とする。


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