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妻が図書館で、観たことないカサヴェテスがあったとDVDを借りてきたので一緒に観る。
なんだこりゃ?
ピーターフォークこそ出てはいるが、いつもの人たちではないし、なんかちょっと違う。もともとわざと演技させることがある作家だが、そういうのとは違って、本気のコメディの演技だ。
3つ子が飯を食いながらアイネクライネナハトムジークを口で演奏している。主婦が追い立てる。夫が渋い顔をしている。一晩寝ないで計画を練ったがどうあってもエールに進学させるのは無理だ。
すると妻はマシンガントークで、カリフォルニア大学では音楽家は飯が食えないが、エールならばお金持ちの同級生とかなんかでコネができるから音楽家として飯が食える。事実、音楽で飯を食っているのはエール出身者じゃないか。しかも家の子はちゃんと試験を受けてエールに合格した本物なんだからますますエールに行くべく運命づけられているわけじゃない。
でも3人だと年間何十万ドル(数値は忘れた)で4年だと何百万ドルで無理だ。
そこをどうにかするのが一家の長でしょ。この後も、この奥さんはこういう発想の人として不快な笑いを取りまくる。(むちゃくちゃいうわりには夫の浮気を疑うシーンとかの演技は抜群だったり)
で、夫は仕事に行く。むちゃくちゃだ。
損害保険会社らしい。黒人の男が係員に大破したのだから保険を下ろせと訴えるのだが、それはお前が泥棒だからだとか無茶苦茶言われて追い出されるのを後目に上司に呼ばれる。エールに子供は入れられるのか? 無理。では社長に言え。あいつはエールだ。エール出身者はクソ野郎だから無理だと思う。でも一応は言え、と自信満々。この上司が、実は最大のキーパーソンにして、物語世界で唯一のまともな人間(ただし被保険者には鬼)ということはこの時点でわかるわけがない。
しょうがないので社長室へ行くと、老人3人で猥談しているが、優秀なセールスマンの直訴とあって、社長は秘密の作戦会議室へ招く(ここが伏線とは思わなかった)。
という調子で、火災保険のセールのために、訪れると、そこはピーターフォークが住むとんでもない陰謀に満ちた家だった、となる。
なんといっても、死体に扮装したピーターフォーク(他にも変装しまくる)の演技が最高にばかげていて笑ってしまったが、無茶苦茶な作品だった。最後は無事にハッピーエンド。
なんだこりゃ? と思ったら、妻があとから、ピーターフォークとアランアーキン(セールスマン)の二人で企画したコメディだけど、監督が手配できずに、カサヴェテスに泣きついて作った作品だから、カサヴェテスは生前自分のフィルモグラフィーに載せるにすさまじく抵抗したし、当時はピーターフォークのほうが圧倒的に人気があったから作家としてのカサヴェテスというクレジットは無視されていたらしいが、今となってはカサヴェテスという名前で発売されているという曰くものらしいとか調べて教えてくれた。
久々に、アメリカンも良いところの最低のコメディ(比較的誉めている)を観たが、笑わせてはもらえたから、観て良かった。実際、テンポといいコメディの文脈に沿った演技や絵を考えると、超一流は何を作ってもおもしろいという見本のような作品でもあった。(正直なところ、ラブストリームスや壊れ行く女よりも、こっちのほうが好きだ)
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