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日々の破片

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2019-04-28

_ ゴダールのイメージの本

シネスイッチ銀座で、ゴダール。

ハウリングのような不快音で始まる。いつもの調子。

技法としては80年代にちょっとはやった映像をハレーションさせたりフォーカスを変えたり彩色したりを使いまくっている。ボカノフスキーやイーノのサーズデイ・アフタヌーンなどをちょっと思わせなくもない。

奇妙なのはスタンダードをビスタにトリミングする妙な映像(2秒くらいたってからいきなりサイズが変わる)を何度も何度も繰り返していることで、多分、おもしろいと思ったのだろう。

が、それはあくまでも技法の話であって、再構築された映画史のような、全編コラージュ作品だった。

当然、記憶から引っ張り出されるものと、まったく知らないもの、見知っているがわからないものがてんでんばらばらに出てくるので、自分で再構築しながら観ることになる。

最初はリメイクで始まる。

最後はアラブの湾岸国の宰相がテロリストの発生を奇貨として独裁体制の樹立をもくろむが、親友の隠者から不成功を示唆されて国外へ逃亡、隠者はテロリストと海岸で話し合うという、ここだけはしっかりとした物語が、棒読みで語られる。

アルファビル、カラビニエ、告別などの自作のシーン、ジョニーギター、ソドムの市、メキシコ万歳、ロッセリーニの何か、それからたくさんのボリスバルネット(船上の2人や散らばり落ちる首飾り)くらいはわかるが、アラブの映画らしきものもたくさん。どれも数秒再生すると次へ進むので、引用数がどれほどあるか見当もつかない。

ベートーヴェンの7番から2音。

観ていて映画の不思議さに包まれる。

映画は映像と映像の繋がりだ。

ハリウッドの映画は、映像と映像の断片が繋がっているだけだが、明確な物語が語られる。なぜ、物語を認識できるのだろうか?

本質的には連続していない(そもそも24コマの静止画を1秒間に連続再生するデジタルなメディアだ)。

とんでもなくイマジナティフな作品だった。固定されているがいつどこで何に気づくかは運任せだから、マラルメ風の偶然性作品だというのが一番正確なのではなかろうか。

88歳がアメリカでは驢馬、フランス(スイスかも)では映像の書か。


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