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日々の破片

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2020-06-09

_ 詩人の魂

車のステレオ用のiPodにはほぼ120GBフルフルに音楽が入っていて、何がかかるかわからない。

甲州街道をガソリンを入れるために環7方向へ進んでいると、多分、妻が昔に買ったのをリッピングしたらしきイブ・モンタンが歌うシャルル・トレネの詩人の魂がいきなり流れてきた。

ロントン、ロントン、ロントン、アプレ、クレポエットソンディスパリュ レールシャンソンクールトンコールダンレリュー

(遥か遥か遥か詩人たちが消え去った遥か後になっても、彼らの詩は路地を駆け巡る)

と実に音も言葉も美しい。

なんて美しい詩なんだろうと思わず聞きほれていると、これまた30年以上前に妻から借りて読んだ石井好子の本を思い出した。

パリ仕込みお料理ノート (文春文庫)(石井好子)

(これかなぁ?)

確か、フランスで出会った最低最悪の意地悪なクソ野郎はシャルル・トレネで、どうしてこんな嫌な奴からあんな美しい詩が紡ぎだされるのか不思議でならない、みたいなことが憤懣やるかたない調子で書かれていてやたらと印象に残っている。

そうか、シャルル・トレネって嫌な奴なんだっけなぁと思いだしながらも、それにしても、詩人の魂は美しい。

特に、オニリニョロンルノンドゥロテル(作った詩人の名前は知らねども)の条が圧倒的なのだが、ふと、こういう死生観というか詩人の魂の持ち主意識が対人間だととんでもなく嫌な野郎になるのかなと思った。

しかし、ウヴァガボン(あるいは浮浪者)で終わるところとか、実に温かい眼差しに感じられるのだが、皮肉っぽいと言えなくもないのかなぁ。

とはいえ、自分(たちという同業者意識があるのかどうかは知らんが)が死んで名前が忘れ去られても、詩だけは世界を漂い続け、軽やかな魂、つまりは彼らの歌が、少女、少年、資本家、職人、そして浮浪者を楽しませたり、悲しませたりするという歌は、詩と音楽、つまりはミューズの贈り物を本当に見事に表現していて感動的なのだ。


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