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日々の破片

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2021-08-15

_ 世界を売った男

陳浩基の世界を売った男読了。2日かからなかった。

網内人が結構おもしろかったので買ったのだがなかなか読まずに先延ばしにしていたのを読んだのだった。

いきなりボウイの世界を売った男の歌詞が出て来て鼻白む。嫌いな曲ではないが、どういう了見の作品なんだ?

読み始めると、いきなり殺人事件の現場でオカルトっぽく終わり物語が始まる。

記憶(6年分)を失った刑事が冒頭の殺人事件の取材をする記者と2人で過去を追いかける。

刑事は現場の違和感から犯人は公的に犯人とされている男(逃走中に運転している車を暴走させて数人殺している)では無いのではないか、と疑っている。その疑いは徐々に確信に変わる。

物語は刑事と記者2人の取材に合わせて章分けされているが、各章の最後に刑事と一見無関係なスタントマン2人のPTSD治療のための医者の記録が挟まる。

徐々にこの2つが合わさってくる。

真犯人は途中でわかるし動機もわかってしまう。

だが、それを大団円させるための仕掛けは思いもつかなかった。きれいに円環が閉じる。見事なものだ。

ドンデンドンデン(Rシュトラウスのツァラトゥストラの冒頭のチャーンチャチャーチャーンチャチャーの後の部分の打楽器)

特に車の落ちのつけ方はおもしろい。愉快ではないが、タイヤ吹っ飛ばしたり隠したり、まあそういわれてもしょうがなさ過ぎる。

ボウイもそれなりに物語にからんでくるのだが、冒頭の引用部分の

Oh no, not me

I never lost control

You're face to face

With the man who sold the world

売ってしまった世界が何であるかとか(というか世界とは人生そのものであるわけだ)、確かに制御を失ってはいないとか、世界を売った男と顔を見合わせているとか、完全に作品そのものを説明しきっていて感心した。

最後、島田荘司という作家(つまらん短編小説集で唯一余情に溢れていた名品の作家としか知らん)が、本格派の登場だ、歓迎するとか書いていて、なるほど確かに整合性が取れているから、確かに推理小説なのだなとわかった(普通にミステリーとして読んでいた)。

世界を売った男 (文春文庫)(陳 浩基)


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