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アマゾンを訪れたら妙なデコ坊の書影が出て来て、絵柄が良いのでクリックするとシャーマンキングだった。確か、昔、少年ジャンプで読んだ覚えがあるが講談社だなぁと不思議に思ったりしたが、なんとなく1~5巻まで買って読み始めて、最終的に全巻買って読んでしまった。
いろいろな意味でおもしろかった。
ジャンプ(努力・友情・勝利)漫画とはいろいろな意味で異なるし、大して読んではいないとはいえそれでもある程度の傾向は掴んでいるはずの「普通の」マンガの文脈とえらくずれているし、画が好きだ。
極端な特徴は次の3点だろう。
・生殖としてのセックス
・本気の多様性受容(リアルの表出)
・表明しない結論
特に最初の点があまりに特徴的に思える。
ジャンプといえば最初の飛躍はハレンチ学園なわけだが、そこに書かれているハレンチというのは、小学生の男子の、女子の裸を見たいとか、おっぱい触ってみたいとかの、要は好奇心ベースものだ。で、これは少年マンガというジャンルにおけるコードとしては問題なく許容されている。
で、それより上の層用のマンガになれば、普通にセックスが出てくるし、少年誌でもチャンピオンでバキが徹底的に書いてみせたし、おそらく援交と虐待というリアルによって少女マンガでも扱われなくもない。
が、これらは少年誌の好奇心ベースのセックス(未満)に対して、快楽ベースのセックスと言える。
それが虐待やレイプのような一方的なものであれ、愛し合った二人の結果であれ、快楽としてのセックスという視点からの書き方だ。
が、シャーマンキングの場合、(少年誌のコードと、おそらく作者自身の考えから)一切直接的には書かれないが、明白に子孫を残すための生殖行為として描かれている。(徹底的にほのめかしだけにしているのは、上であげた3つの特徴の3点目でもある本作の特徴。たとえば、それまで「婚約者」と主人公のことを周囲に告げていた女主人公が「夫」と呼ぶように変えていたりする)
そのわりに、露悪的にリアルな小道具は持ち込んでいて、高速道路のサービスエリアを書けば背景にラブホテルが林立するし、北海道から東京に来ている兄と妹が宿泊するのはラブホテルだし(こちらは全く怪しい関係ではないようだが)こういった説明抜きの設定は多い(その極端な例が、アイアンメイデンの変身後の鍵穴)。
こういった、もろもろの少年マンガのもろもろのコードの外し方が、最終的には人気投票最下位になり打ち切りになったのだろうと想像されるが(おそらく最大の原因は、ハオという最後の敵に対してどう対処するかについての説明をしていないことと(おそらく作者はぼかしたつもりはなくて自明の選択だと思ったのではなかろうか?)で読者が物語のゴールを見失ったこと、全チームが決勝戦に出場することになって勝負が曖昧になったこと、意外と戦闘のバリエーションが乏しいこと(これは作者本人の興味が完全にそれてしまったのではないかと思う)、死んでも簡単に蘇生できるような仕組みを導入したこと(それも含めた戦略が出て来ているわけだが小学生にはわかりにくいだろう)で戦闘のスリルのようなものがなくなったこと、女性主人公たちの立ち位置がほぼジェンダーを無視していること(普通の漫画の登場人物の感性を持つ主人公の役割をアイヌの少年と中国人の少年(途中まで)に負わせているが、主役が全然そのつもりがないのは読者にはわかるのだろう)といった、もろもろのカタルシスを読者に与える仕組みをなくしてしまったことが原因だろう。ちょうど、セックスの扱いから快楽が完全に抜け落ちていることと軌を一にしている。
が、そこが良いのじゃないかな。というか、だからおもしろい。
20世紀の最後から21世紀の最初への架け橋として強烈な時代性を持つ作品だ。
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