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やっと都合がついたので豊洲でシン・仮面ライダー。
予告編をみたときからえらくおもしろそうだと思ってわくわくしていただけに感無量だ。
仮面の口のところのギザギザが大写しになるだけでしびれる。こんなに仮面ライダーが好きだとはまったく思いもしなかった。
いきなりトラックを相手にバイクのタンデムでのカーチェイスから始まる。崖の上から飛び降りるとベルトのバックルに仕込まれた風車がくるくる回って変身する。おお、これこそ仮面ライダーだ。
と思ったら血が飛び散りまくる強烈な暴力シーンになってびっくりした。仮面の中に仕込まれた昆虫脳にする機構で歯止めが利かなくなるという設定らしい。
ところが、しばらくすると辛いと幸せは良く似ているというようなどうしようもないセリフが出されまくる。明日といういう字は明るい日と書くのね時代っぽい。
で、ああ、そうそうこういった妙にセンチメンタルで自己陶酔の極みのようなセリフこそ石森章太郎の持ち味だったと思い出す。
まったくもって石森章太郎の世界だ。
今でも強烈な印象があるのが、0011だと思うがアポロンとの戦闘中に「なんだお前の強化能力は加速装置だけなのか?」に対して009が「あとは勇気だ」と答えるシーンがおれにとっての石森章太郎の原点なのだった。子供心に、いやそれではだめだろうと強烈な印象を持たされた。
後になってタイトルはハリウッドに元ネタがあると気づいた(さらに本当の元ネタはウィリアムアイリッシュだと思う)が、夜は千の目を持っているというとんでもない少女マンガや、あるいは009の元単行本の6巻にあたる少年マガジン連載の末尾の002と一緒に大気圏に突入すると流れ星のようになってそれを見ている少女が願いごとをするとか、手塚治虫が嫉妬のあまり蛮行に及ぶことになるジュン(こちらはセリフすらない)とかの、べちゃべちゃのセンチメンタルが石森章太郎なのだった。
石ノ森章太郎コレクション ――初期少女マンガ傑作選 (ちくま文庫)(石ノ森 章太郎)
それにしても、サイクロン号を試乗していて速度を上げるとカウルやマフラーがばきばき変身していくところとか見ているだけで嬉しい。
こうもり男との戦いは失笑のきわみ(と思ったら、さらに後で2号とのバトルでもっと驚くことになるわけだが)だが、高速移動の最中の「お前のジャンプ能力は45mだからおれは安全だ」とか「それはどうかな」(というセリフがあったかどうかは覚えていないが、まあないだろう)からの一連の流れとかも楽しい。
というか、仮面ライダー1号と2号のスタイルそのものだけでいつまでも観ていられる。
と、石森章太郎ワールドの再現だよなぁと楽しんでいたわけだが、あれ? と思ったのは本郷猛が一人で蝶男(イナズマンか?)との戦いに向かうのを橋の上から2号が見ていておれには関係ないというようなことを言うところからの、暗闇の中でのバトル経由で、これでおしまいだというところでの助太刀入りの流れが、池辺良と高倉健の東映映画っぽくてこれもおもしろい。
「兄貴、悪いがおれは足を洗ったんだ」からの「お前もずいぶんな馬鹿野郎だな」までの一連の流れに沿っていて、こんなところで東映映画にも目くばせしているのかと感心した。
最高だった。
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