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山野さんからもらったクラウドストラテジーを4週間くらいかけて読了。
数年前に読んでいたらと口惜しさ1/3、ああそうかと目からウロコが2/3という感じ(数年前にオンプレ系の企業からAWSメインの企業に転職したので、AWSの山のようなサービスの取捨選択を数年かけて実地で試行錯誤しながら現在に至るという感じなので、すでに通り過ぎた道についてはあの時に知っていればなぁというのと、今になってもわかっていなくてなるほどというのがある)。
特にクラウドで重要なのは、使い捨ての概念で、どうしてもオンプレ的な頭から抜けるのは難しい。そうなるとEC2のインスタンスを抱え込んで課金額を目にすることになる。
本書はおおざっぱに、クラウドとは何かの軽い説明、組織論(オンプレの分業制とは変えたほうが良い)、アーキテクチャ(どう組むのが良いか)、お金の使い方となっている。
あまり生な技術的なディテールは無く(YAMLのコードが出てきたりはしない)、ケースと考察の繰り返しによった書き方なので、ある程度はいじくったことがないと実感がわかないかも知れない。一方、とにかく考え方を頭の中に作る目的であれば、必要十分以上の内容となっている。おれにはやたらと為になった。
組織論とお金の使い方はわりと関係していて、長い稟議の果てに予算を確定させる方法だとクラウド上にオンプレマシンを配置した、ということになりかねない。借りて使って捨てるをくるくる回すのが望ましいから、そういうお金の回し方が可能な組織が必要というようなことになる。それにしても、ここでおれが書いたまとめはおおざっぱ過ぎる。
あと、とにかく目からうろこだったのが、MTBFとMTTRに対する考え方をクラウドでは変えろという主張で、これは凄まじく納得した。
オンプレであればMTBF(フェイルする間隔)をとにかく長くとる。そのために冗長化する。冗長化のコストは最初の機器調達にもっぱらかかる(その後の運用のコストが2倍になるわけではない)。
が、クラウドであればMTBFを考えるよりもMTTR(復旧速度)を重視しろ、という教えだ。
新たにEC2を借りて、そこに用意してあるDockerコンテンナを動かすだけならば数分だ。itamaeなどのデプロイスクリプトを使っても30分もあれば可能だ(でも、これ読んでちょっとまじめにコンテナ化へ移行を始めたところだったりする)。今はDevOpsが重視されるのは当然のことだったのだな。
であれば、冗長化して使わない(キャパシティーに問題なければ)インスタンスをあらかじめ確保する意味がどれだけあるか?(数分の停止も許容されないシステムはあるからすべてがすべてというわけではない)。
その一方で、スーパーマーケット的な買い物をしないようにという教え(いろいろなサービスがあるからつまみ食いしまくって、そのまま放置してレジでびっくりみたいな)とかもあって興味深い。試して使わないと考えたらすぐ削除。
とにかく実に学ぶ点が多い本だった。
書き方がゆるいので読みやすくて、その点でも良い。
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