著作一覧 |
BSでやってたので録画して観た。最初の20分くらいは無し(気づいて録画し始めたのが20分後くらい)。
ジョンフォード作品で、主演はジェームズスチュワートとリチャードウィドマーク。
映画の中の映画のような作品で堪能しまくる。
ジェームズスチュワートは軍に雇われた保安官マケーブで、リチャードウィドマークは監軍相当(といっても二人だし、どうも旧知の間柄らしい)のゲーリー中尉。
見始めたときは、まだ二人は出発前で、マケーブはゲーリー中尉がついてくるのをすごく嫌がっている。どうもコマンチ族に人質として取られた子供(といっても10年以上前なので現在は立派な若者のはず)を交渉して返還させることが目的らしい。
で、金持ちらしき男から、とりあえず顔が立てば良いのだから、どこの馬の骨であろうが連れ帰ってくれば(=人質関係なく適当に青年を連れてくれば)大金を払うという約束を取り付ける。どうもマケーブは金が好きらしい。
一方、ゲーリー中尉はまじめ一方で、町に来ている若い女性から弟を連れて帰って欲しいと懇願されながらも懇ろになりつつある。
そこにマケーブが戻ってきて、弟に夢を持つのは良いが、現実にはろくに白人家庭で文化を覚える前に人質に取られて10年、コマンチの間で暮らせば、言葉は喋れないし、全然違うものになっているぞ。甘ったれるなと怒鳴り散らす。
それは正しいがものには言いようがあるだろうとゲーリーが怒る。
女性は憤然としてどれだけ自分が弟に会いたいかを訴える。
で、馬上の二人となるのであった。
なるほど捜索者の別バージョンだな。
ただし捜索者とは違って、こちらはコマンチから取り返した人質のその後が主眼だった。
というわけで、返還交渉はマケーブが用意したライフルによって(そういえば先日見た「不死身の保安官」(これも良い映画だったラゥオールウォルシュ)でも交渉材料は銃だった)比較的簡単に終わるのだが、軍幹部の妻(メキシコ系)も連れ帰るために軋轢が生じる。
が、酋長にとっても軍幹部は目の上のたんこぶで、男の了解として追加の銃(人質が二人になったので値段がマケーブの元の考えの倍となった)の代わりに軍幹部の暗殺が図られる。
かくして、真夜中に軍幹部が立ちはだかる、それに気づいてマケーブが立った瞬間に早撃ちで射殺する。このシーンは実に印象的。
が、町に帰ると、若者があまりにもコマンチになりきっているため、誰も引き取ろうとはしない。唯一、子供を失った悲しみで異常をきたしている奥さんが息子だと信じ込み、その優しい夫もそれを受け入れる。
一方、メキシコ女のほうはあらかじめ想像していたとはいえ、偏見にさらされまくり、マケーブに、コマンチのところに戻してくれと懇願する。
いや、それは逃げであって本当の希望とは違うだろう。自分の望みをかなえるには戦うしかないんだ、とマケーブは軍のパーティーに連れていく。その前にコマンチ風の髪型を西部の女性っぽくするためにいろいろこねくり回すところシーンが抜群におもしろい。
しかし案の定、パーティでは男は誰一人として彼女とは踊ろうとはせず(さすがにゲーリー中尉が怒るのだが、本人、弟探しの女性とくっついているのでやはり相手にはしないところがなんともな感じではある)、やむを得ず壁の花として椅子に腰掛けると、今度はコマンチとの夜の生活について次々と淑女がやって来ては根掘り葉掘り聞き出そうとするので、我慢の限界にまで達する。
パーティ会場から逃げ出そうとするのをマケーブは押しとどめて、戦え! と言う。
ついに彼女はコマンチの生活とはどういうものなのか、お前らの平和はどういう犠牲の上になりたっているのか、女性を盾にした卑怯な行動について演説を始める。
が、なぜ自殺しないのか? という疑問には答えることができずに逃げ出す。
そこでマケーブは後を引き取り、同じ宗教ならわかるであろう。自殺は罪である(とはいえ、ピューリタンなアメリカ人とカソリックのメキシコ人ではそのあたりの感覚が大きく異なるのかも知れない。マケーブはコマンチとも付き合えるし、カソリックについてもわかるらしく、マッチョな保安官でありながら実は教養人なのだった)と演説を続ける。
が、その場の全員、神妙に聴いてはいるが、それはマケーブがおっかないからだけだというのは映像で見せる。
一方、青年は奥さんが戒めを解こうとするのだが、理解が追いつかずにもみあいとなって殺してしまう。
当然のようにリンチとなり、首吊りの木への行進が始まる。
そこにマケーブ、ゲーリー登場。リンチは許さん、とマケーブ。すると扇動者たちが、おれが検事だ。おれが判事だ、陪審員だと口々にして正当性をアピールする。
万事休す。
荒々しく青年を突き飛ばしたせいで、幌馬車の荷物が崩れ、ゲーリーの相手の女性の荷物からオルゴールが飛び出して鳴り始める。
マイ! と初めて青年の口から英語が飛び出す。彼女はマケーブに当たり散らされたときに、弟の大事なオルゴールで、「僕の僕の」と夢中だったと話した伏線がいっきに回収。もちろん、彼女は連れ帰られてきた青年を見た瞬間、あんな獣は弟ではないと言い切っているので、どうにもしょうがない。
青年は吊るされる。足がぶらぶらする。
テンガロンハットを顔にのせて、揺り椅子にだらんと寝そべって、柵に足をかけている、象徴としての保安官登場。
マケーブが軍から解雇されたので帰還したのだな(冒頭を観ていないので実際のところはわからないのだが、終了後に映されたスティールにジェームズスチュワートが同様な青い服を着て寝そべっている姿があるから、その読みであっているはず)と思うと、全然別人。
マケーブが戻ってくると、おれがあんたの不在中に選ばれた新しい保安官だと名乗る。
まじすか? とマケーブが保安官事務所兼酒場(に見える)に入ると、酒場の女主人(どうみてもマケーブの本来の相方に見えるというか、最初から観れば良かった)が、メキシコ女を口汚く死ねば良かったのにと罵る。
メキシコ女わっと涙をこらえて、遠くへ行く駅馬車に乗る。
なんてこと言うんだ、とマケーブが女主人を殴ろうとすると、ガーターベルトからナイフを取り出し、殴ったら刺すという一触即発状態となる。このテンポも抜群。
愛想がつきたぜ、とマケーブも駅馬車に乗ることにして御者台に乗り込む(というのを、一人悲嘆にくれるメキシコ女が地面に移った影に気付いて見上げるとマケーブがいるという演出となっていてうまい)。
ただ、新保安官、女主人、それとゲーリーの部下でマケーブの呑み友達らしき伍長(だと思う)がにこにこしているから、夜のうちにマケーブがメキシコ女に惹かれていることに気付いたゲーリーと伍長が示し合わせて、不器用でへそ曲がりなマケーブとメキシコ女を結び付けるための一芝居だったらしきことが暗示されて終了。
映画を観た、と心から満足した。
コマンチ族のところへの途中でジェームズスチュワートがリチャードウィドマークに早抜きで銃を突きつけるシーンとか思わず巻き戻して2度見してしまった(ら、実にインチキだった)。
アマゾンだとR18+になっているがなぜだ?(ネイティブ差別的視点か? そうではなく健全なアメリカ市民こそが下品で手前勝手で偏見に満ち溢れたカスという差別的視点で作られているからか?)
ジェズイットを見習え |