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日々の破片

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2023-11-23

_ 河内山宗俊

26日までプライム見放題なのでやっと(というくらいに山中貞雄を見る機会がこれまでなかった)観た。なるほど、伝説化するだけのことはある。というか無茶苦茶おもしろい。

何言っているのかまったくわからないけど無問題。

広太郎が直侍(なんだが、元の天保六花撰とは違うので直侍とは呼ばれないし、三千歳の扱いがひどい(フィルムが消失されているだけかも))を名乗ったせいで宗俊と女将さんがぎくしゃくするとか、本来はクールな殺し屋金子市之丞が人情味あふれる髭面のおっさん(しかも、それほど腕が立たない)だったり、お笑い要素もふんだんに盛り込み(たとえば直侍が盗んだ小柄を売りに出して、大膳の家臣が頭悪い買い物(仲間同士で値を競り上げてしまう)をしてから大膳に戻り、そこに宗俊が強請に来た後日の何が偽物かの大膳と家臣のやり取り(後半になると台詞が聞き取れるようになる))を盛り込みながら、宗俊と市之丞が命を張って森田屋の襲撃から直侍を逃がす幕切れ(観ていて、ウィリアムホールデンとボーグナインのワイルドバンチを思わずにはいられないが、時間軸は逆だ)まで、まったく弛緩なく映画が観られる。直侍を逃がす話にするために、甘酒屋の姉のお浪(まだ16歳くらいの原節子なんだが、正直それほどきれいかなぁ)を出してくるのだが、直侍の頭の悪さと素行の悪さ、間の悪さが致命的で、観ていて腹が立ってくる(が、姉が16歳なら弟の直は14歳とすれば、まあそんなものか)。が、それだけに直に無茶苦茶迷惑かけられまくっている宗俊と市之丞が不憫な姉を助けるために命を張るラストが効いてくる。ドブ川での市之丞の戦いとか、橋の下とはいえ長坂橋の張飛のようだ(こっちは実際に戦わずに曹軍は引き返す)。最後の宗俊の槍衾は弁慶みたいで凄まじい。

というか、同じく天保六花撰の森田屋が敵側なのはいかがなものか。丑松がなんともいえない嫌な役回りにされているのもいかがなものかだが、要は天保六花撰ではなく、河内山宗俊というタイトル通りの宗俊の漢っぷりを描いた映画なのだった。

それにしても1936年に娯楽映画に必要な要素がすべて詰め込まれているとは。(もっともウォルシュのビッグトレイルは1930年だから不思議ではない)

とにかく河原崎長十郎の漢っぷりが実にかっこいい。

河内山宗俊(河原崎長十郎)


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