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日々の破片

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2024-03-17

_ 新国立劇場のトリスタンとイゾルデ

いろいろと信じ難い名演だった。

そもそも主役二人が次々と交代(理由は知らん)なんだが、よく探してきたもんだとトリスタンのゾルターン・ニャリは見事なヘルデンテノール(但しイゾルデより声量がなくて負けるのは惜しい)で演技も堂々たるもの(2幕最後の決闘の終わらせ方の上手さにはびっくり)、イゾルデのリエネ・

キンチャも最初のうちは張り上げて愛の死では微妙にオーケストラに負けるとはいえ実に立派、大野は前回と違って陶酔しまくりの大遅延とかなくキビキビすべきはキビキビ、陶酔的なところは元から抜群な指揮者だけに抜群、むしろ作曲家の粗(3幕最初の牧童のソロが長過ぎるとか、2幕のマルケの能書きが長過ぎるとか、3幕のトリスタンの台詞が何が何でも錯乱し過ぎ(友よと褒め称えてすぐに愚か者見張りに行けと喚きだすとかクルヴェナールに対する態度の一貫性の無さはもしかしてワグナーはげらげら笑いながらこの部分の脚本を書いていたのではないか?)のほうが目立つくらいだ。

幕切れ、赤い太陽が沈み闇の世界へイゾルデが去る演出も素晴らしい。赤い太陽と白い太陽が交代する舞台設計は実におもしろい。マクヴィカーはただものではないなぁ。

歌手は全体にとても良かった。クルヴェナールのシリンスもそうだし、長過ぎる歌はともかくマルケ王のシュヴィングハマーの朗々たる歌いっぷりも実に見事だった。誰よりも拍手を受けていたのは藤村実穂子だが、他の演者と並ぶと実に小柄で華奢なのに(しかも相当年期も入っているだろうに)どこからあの声が出て来るのか不可思議だ。それにしても凄い歌手だ。

と、実に良いものを観た。


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