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子供がチケットを取ってくれたのでゴースト&レディを観に行く。(日付を変え損なった。10月5日だ)
良い舞台だった。
クリミアへ行こうの曲がやたらと印象的だったけど(主要動機として使っているからだ)、1幕最後の階段を2つぐるぐる動かしながらグレイとフローが交互に歌ったあと転調して同時に歌う曲がとても良かった。
幕開けは思わずびくっとなったほど衝撃だったが、原作の借り物はそこだけにして、代わりにランプ(確かにナイチンゲールといえばランプなのでわかる)を2回出してくるのが一番の舞台化にあたっての仕組み上の改変と思った(幕開けもびっくりだが最後も2階席で観たのでとんでもなかったが、つまりは最初と最後を借り物でまとめていると今気づいた。その点については原作も枠組みの中で最初と最後なので構造としては同じにしているとも言える)。
プログラムを読むと藤田和日郎のインタビューが出ていてラストは脚本家と相当もめたらしいが、それは全然気にならなかった。元々曖昧(時間軸をいじっているのでどうとでも受け取れる)な終わらせ方だったし、重要なのはグレーが物語を語るというところにあるのだと思うし、そこはまったく変わっていない。ただ借り物が変わるだけに、ホールとの戦いも随分と異なっていたり(そういう意味ではデオンを明白に女性としている点も違いか)そこが違うだけにフィッツジェラルドの最後の態度も変わって来るところがおもしろい。デオンを女性にすることでフローと対比させて、原作の因縁があくまでもホールとフロー、デオンとジャックなわけだが、変えてデオンに別の人生を作ったことですべての焦点がフローに当たることになって、凝縮性が高まる。そこで物語が舞台の尺ぴったりにまとまったと考えると脚本家の腕の良さも大したものだ。
考えてみると単行本の後書きでナイチンゲールのエピソードはやたらとおもしろいがすべてを詰め込むことはできないので涙を呑んで刈り込みまくったとあったが、2時間半の舞台にするにあたって脚本家も刈り込みまくったのだな(刈り込みの2乗だ)。
舞台では幽体離脱を都合3回見せるが、うまく作ってあってびっくりだ(演出がうまいのは、1回目に見せたので(ここで見せることで鼓手の物語への絡み方をスムーズにさせている)2回目は歩き方を変えて(ここは見送るところ)3回目は真正面からと、すべて趣向を変えている)。
グレイが霊気を吹き込むシーンは、まさに舞台だった(もしかして原作と一番表現を変えたのはここなのかも知れない)。仕掛けも見事でこの情景はとても良かった。
それにしても原作を読んだときは、時代で括ったとはいえ、この物語とこの物語とこの物語をこう組み合わせてこう作るのか、すごい作家だなぁと感嘆したが、まったく見事な作品だ。
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