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日々の破片

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2024-10-12

_ 夢遊病の女

新国立劇場で夢遊病の女。指揮は安定のベニーニ。それにしてもこのクラスの指揮者が安定して振りに来てくれるのは実にありがたいのではなかろうか。

始るとバレエによる黙劇で、鹿の角などを利用している。アミーナと思われる女性がさまよっているわけだが夢遊病なのだろう。歌手の代わりの黙役の人かな? と思ったら本人だった(と後でわかった)。

谷口睦美のテレーザが登場。声量が抜群なので最初ゲスト(海外の招聘)歌手なのかと思った。ちょっとぶっきらぼうな印象がないわけでもないが(特に2幕目の自分が花嫁になれるとうきうきするあたり)、立派な歌手だ。

クラウディア・ムスキオのアミーナ登場。とても代役とは思えないのだが。最初からこの人で良かったのではないか? コロラトゥーラもきれいだしすごく良い。

エルヴィーノ登場。独特の不思議な癖がある声で、あれこの声は聞きおぼえがあるけどシラグーザのようなと思ったら(シラグーザが数年ぶりに来ることは知っていたが、なんとなくロッシーニだと思っていた)シラグーザだった。それにしてもこの人は好きだ。これでチェネレントラ、愛の妙薬と新国立劇場での登場はすべて観ていることになる。

で伯爵登場。すげぇ良い伯爵と思ったら妻屋だった。この人は本当に今や押しも押されぬ大看板だ。歌はもちろん、とにかく立ち居振る舞いにしても細かな動作にしても抜群。(最初に観たのは東京リングのファーゾルトかファフナーで、その時は声量が無いなぁ、日本人歌手ってぱっとしないなぁとか感じたのだが、あれは一体なんだったのだろうか? こんなに立派な歌手なのに)

この演出/演技だと、伯爵はアミーナの父親ということを大きく匂わせる。それだけに部屋にアミーナが入り込んできたとき、思わず手を出しそうになって引っ込めるところに説得力がある(何しろ、時代的にはドン・ジュアンやアルマヴィーヴァ伯爵がうろうろしているわけだから、普通どうなるかは自明で、だからこそアミーナは窮地に陥る)。

細かな演出では、テレーザが落としたスカーフに気付いて拾うのはアレッシオ(地味な役だが近藤圭も良い歌手だ)なので、最後アレッシオがアミーナの母親に託すという設定なのだろう。

最後の教会のシーンで、なんとなく、モダン演出ならアミーナは屋根から落ちて血まみれでお終いだよなぁとか考えていたら、暗転の直前に飛び降りるのには驚いた。どういう解釈なんだ?

カーテンコールでベニーニはまっさきにホルンを讃えていたが、記憶の中ではどこにホルンがあったか良くわからない。森と村なので普通に情景音楽のところにホルンが溶け込んでいたのだろう(くらいにうまい演奏だったのだな)。というか、ベルカントでホルンというのはおもしろいオーケストレーションかも知れない。ベリーニの才能は素晴らしい。

と、歌手、指揮、オーケストラ、演出、舞台、曲どれをとっても抜群だった。良いものを観られた。


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