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原作は読んだことがあるが、ミュージカル版は音楽しか聴いたことがなかったウィキッドが映画化されたので観に行った。
原作と違ってミュージカルはもっとノンシャランな友情物語なのかと思っていたら、そうではなく、原作と同じく「自分の頭で考える」(結局はウォークということで、現在のアメリカ合衆国の状況を見ると実に皮肉な感じを受ける)というのはどういうことかというテーマなのにはちょっと驚いた。
その点で本作でのフィエロの立ち位置が実におもしろい。
最初は反知性主義の王者として現れて学問(アカデミズム)を捨てて街に繰り出そう(寺山修司だ)と学生を煽りまくる男(ここのナンバーは実に良い)として出て来る。確かに反知性主義(本来の意味)は、まさに自分の頭で考えることの重要性を問う考え方ではある。
かくして、実はフィエロはエルファバと並んで自分の頭で考えている人間なので、罌粟の魔力に引っ掛からずに目覚めたままでいる(またウォークだ)。
とにかく飽きさせない仕掛けも良くて、エメラルドシティでのパーマの鉄兜の女性群のようなオリジナル映画の引用が大量に含まれている点や、塔から墜落して最後の最後で飛翔する(これって普通に見せ場として考えたのか、それとも『ウィズ』(全然記憶に残っていないようでいて、塔からの墜落とぎりぎりでの飛翔だけは印象として残っているというか、そのシーンだけで他はどうでも良い)の引用なのかな? )の爽快感など悪くない。
原作ではまったくどうでも良い存在だったグリンダを実にうまく使っている(ボックを追いやりたいので適当言った結果、妹がわかってはいても感謝し、エルファバがわかっていはいても先生に推薦して、という連鎖)のもおもしろくて、なるほど、音楽だけ聴いていてもわからない、ミュージカル版の脚本家と音楽家の手腕にも感心した。実にうまい。
おもしろかった。
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