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fbで確か松永さんがおもしろがっていた(と思うのだが、今見ると違うような。自分がコメントなりイイネなりした他人の投稿ってどうやって調べるんだ?)ので買って読んだよ、レッドサン(赤い太陽ではなくて、赤い息子だ)。
サンドマンが紹介されてから以来のアメコメ好きなのでもちろん楽しめた。
舞台は、スーパーマンがアメリカではなくソ連に不時着した別の世界だ。故郷の惑星が太陽に飲み込まれそうになったとき、両親は将来を託して赤ん坊のスーパーマンをロケットに乗せて地球に送り込んだのだった。それがアメリカに落ちるか、ソ連に落ちるかは単なる地球の自転がどこまで進んでいたかの差に過ぎない。というわけで、レッドサンの世界では落ちたコルホーズでロシア人の両親に大切に育てられる。
成長して超人として理想世界を作るために邁進する。
立派な労働英雄ぶりにスターリンは次の世代の指導者としてスーパーマンにソ連と共産主義の将来を託す。
おもしろくないのは、スターリンの子供の秘密警察長官だ。(ソ連はくされきったところがやまほどあったのは間違いないが、少なくとも北朝鮮とは違って、万世一系の独裁ではなく、実力主義によって最高権力者が変わるシステムを持っていた。なので、子供よりスーパーマンのほうが優秀ならば変な小細工はせずに、スーパーマンを後継者にするのは少しもおかしくはないのであった)
スーパーマンはすごいのだった。透視はできるし聴力もデビルイヤーだ。1300km離れたミンスクで列車事故が落ちそうだと気づけば、秘密警察長官との会見の間のほんの数秒のうちに飛んで行って列車を止めて戻ってくる。
そういう世界が気に食わない化外の民は当然ソ連にもいる。
かくして同じくなぜかソ連に生を受けて、反スーパーマン闘争のブレチンを刷っているところを秘密警察に踏み込まれて両親を射殺された少年は暗い妄念とともに、バットマンとしてスーパーマンとソヴィエト連邦に戦いを挑む。
そこに、アメリカ合衆国を事実上支配する超天才科学者レックスルーサーの対ソ謀略が絡み合い、物語は進む。レックスルーサーはこの世の楽園を現出しようと日夜人民のために奉仕するスーパーマンをたたきのめして、悪と陰謀と欲望に支配される自由な世界を獲得できるだろうか? 相変わらず鍛え上げた生身の肉体と優れたゲリラ戦術の持ち主バットマンとスーパーマンの戦いの結末はいかに。さらに赤くそまったアマゾンの王女、ワンダーウーマンや、ルーサーによって具現化したグリーンランターンは。
ちなみに、スーパーマンによって監視されているとはいえ、食糧増産がなされて天変地異は大被害が生じる前に解消され、大事故は未然に防がれるので、反逆の魂に揺さぶられない限り、ソ連はどうもとても住みやすそうに見える。その意味では、バットマンの立ち位置は日本国に対するオウム麻原だし、ルーサーの立ち位置は世界秩序に対するビンラディンですな。
スーパーマン:レッド・サン (ShoPro Books)(マーク・ミラー)
ブレイニアックというルーサーほどではないにしても本家スーパーマンの宿敵に相当するらしい宇宙人がソ連の友として重要な役割を担うのだが、これは知らなかったのでそこは裏の物語が見えなくて残念だった。
おれのヒーローはやはりバットマンだなぁ。(ルーサーは万能魔人過ぎてちょっと退屈だ)
ジェズイットを見習え |
バットマンは反ソテロリストになるよりは秘密警察署長かコミンテルンの全体統率者で、<br>ルーサーは共産圏おなじみのノーメンクラーツラ辺りになるのが相応しそうな気が……まぁ、あくまで個人的な雑感ですけど。<br>あとスターリンはスーパーマンみたいな人間を許容するのか? というのちょっと疑わしく思えてしまうのであって。<br><br>とりあえず"こっち側"でのレーニンの役割をスーパーマンにそっくりそのまま代替して貰うレベルの思い切りが色んな意味で必須条件なのかもしれないだろう、と思ったり。
いろいろ置き換えてみると面白いんですが(僕もいろいろ置き換えてやってみた)、それだとスーパーマンとルーサーとバットマンがみんなソ連の体制側になってしまって、どうやってもアメリカに勝ち目はなくなっちゃいませんか? <br>スターリンはもちろん、スーパーマンを許容できないでしょう。僕も同感です。でも、戦っても勝ち目はなく、とりあえずスーパーマンを後継者にすれば自分の功名を上げてくれる(フルシチョフみたいにスターリン批判をするとは思えない)とか、考えるといろいろおもしろいですね。