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通勤用に買った被差別の食卓を読了(3週間前くらい)。4日かからなかったと思う。
最初に被差別部落に生まれた筆者の話として、あぶらかすがおいしくて好きでいつも楽しみにしているということが紹介される。おいしそうだ。おれも牛すじは大好きなのだ(調理は面倒だけど)。
それが中学くらいにおそらく(と、筆者の書き方も記憶をたどっているので曖昧)同和教育の中で出てきたか何かで被差別部落固有の食い物だと知る。高校のときに同級生があぶらかすをぽりぽり食っているやつを見つけてそれうまいよなぁと話しかけようとして、むむ待てよと思いとどまる。
おれはこの話はどこかで既に読んだ。ビッグイシューかな? 掲載紙は思い出せないが、とにかくえらくうまそうな食い物だなと思ったので印象深い。
というわけで単行本にまとまっているので買って読んだのだった。
本書は、アメリカのソウルフードとして黒人奴隷の食い物としてのフライドチキンや豚もつ煮、ザリガニ料理を求める南部とニューヨークの旅から始まる。
読んだ直後にグリーンブックを観て、ドクターシャーリーがフライドチキンを食ったことがない(ピアニストだから指が油まみれになるのは嫌だろうな、と同じくキーボードを叩きまくる職業のおれは思うわけだが)とかいろいろ考えることはあった。
要は農園主が胸やら腿やらの肉を焼いて食って捨てた手羽先だの首だのを黒人奴隷が拾ってディープフライにして骨まで食えるようにした料理が発祥だということで、なるほどと思う。
次にブラジルに進む。なんといっても、初期に逃亡した奴隷の集落の話が圧倒的におもしろい。
さらにブルガリアとイラクにロマの食い物を食いに行く。ブルガリアのロマも最近は食べなくなりつつあるらしき(良くわからない)ハリネズミ料理を食べる。いっぽう、イラクでは特にロマ固有の料理というのはなかったりする。ちょっとイラクのあたりの書きっぷりにはひくところが多かった。
そしてネパールへ行く。牛を解体して食べる被差別民という日本と近い構造があり、食べ方も似ているなど。革命があったので王制時代よりはましになったとか、確かに血のつながりだけで社会構造が決まる国家というのは滅びるべき存在である。
そして日本に帰って来て、子供時代とは異なり意識的に被差別部落の食べ物を食べまくる。おもしろい。
おれもすじの煮物を作ってしばらく放置すると煮凝りになってその味とか良く知っているので食い物の話としてもおもしろい。
中途半端な社会科学的な考察が入っていてちょっとそれはアプローチが違うのではないかとか疑問に思う面もあるが、食べ物紀行としても、あまり観光的海外話では出てくることがない内部社会の話としても知らないことがたくさんあっておもしろかった。ハリネズミは食べてみたい。
追記:アマゾンの星1票のやつ、おれが(特にイラクパートで)感じたような不快さを表明していて興味深い。
が、おそらくそれは違って、エンターテインメントとして消費できるようにするための一種の文書としての儀式のようなものではないかとも思う。であれば、それはしょうがないものなのだ。難しいね。
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