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妻がおもしろそうだからブリグズビー・ベアを観ようというので観た。
始まるやすさまじくチープで、カルト映画というジャンルの王道ど真ん中だと思いながら観ていると、意外な方向に物語が進み、最後には余情あふれる感動があって、これは実に恐るべき感動カルト映画だった。
聞いたこともない監督、出演している役者で名が通っているのはマイク・ハミルという特定の文脈以外ではあまり有名とも言えない役者だけ、そもそもえらく少人数低予算丸出し、素人映画だからという理由は当然あるのだが劇中の大半を占める映画内映画とテレビ番組はおそろしいほど稚拙(とは言えないところが傑作になっている理由なのだが、少なくとも映像研が作るアニメとは比較にならなそう)、どう考えても無理がある設定(理由が説明できないのなら、説明しない! という思い切りの良さ)、だめな精神科医を除けば(というか精神科医は凝り固まっているだけで悪意があるわけではないので除く必要はないが)悪意がある人が出てこない気持ち良さ、忍者病にかかっている患者のような脇役にもいちいち味がある。
どうなることやらと思ったところで、スタートレックのTシャツ着ている小僧が出てきて(なぜかこいつが主催のパーティらしいが庭には別種の連中がいて、この高校内カースト(側がスタートレック側視点なので高低はなく、単に種類が違うというだけとなっている)の描写によって主人公の居心地が良い場所がうまく作られる仕掛けはとても気分良い)、しかも刑事が役者崩れとか、ご都合主義でうまく進むように仕込んであるのに、それが普通に心地よい物語の進行となって、どうにも気持ちが良い話になっている。驚くべき和解が繰り広げられるので最後は普通に気持ちの良い感動がある。見事だ。
というわけで、わけわからんだろうけど、強くお勧めできる映画だった。
題名のブリクズビー・ベアは、誘拐犯(アマゾンの紹介に明示されているように、最初の生活は偽家族なのだった)の親父が作りまくった連続テレビ番組(その子供専用)で、道徳、数学などの優れた教育番組を兼ねていることがミソになっている。ここをちゃんと読めないとアマゾン星1つの評価者のような見当外れの鑑賞となってしまうのだろう。
・ワルーギツネが窓の外にいるのが実に良い
・バックミンスターフラーハウスもどきなので偽両親の出自の設定もなんとなくわからんでもない
・多分、バックミンスターフラーハウスもどき内で使っているコンピュータもわかる人にはわかるカルトっぽさ(おたくっぽい凝り方)があるのだろうなぁ。2018年の映画なので普通の生活に戻るとMacBook Airになるわけだけど
・解が6になる予想は何かのもじりになっているのかなぁ
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