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とても良いドン・ジョヴァンニだった。観に行って良かった。
まずなんといっても歌手が全員素晴らしい。正確には、始まってすぐは誰も全然ピンと来なかった(特にエルヴィーラ(セレーナ・マルフィ)は響かない金属的な声で嫌いと感じた)。のだが、進むにつれて俄然良くなる。最初はこれまた上に伸ばす音だけはきれいだなと感じたドンナアンナ(ミルト・パパタナシュ)も美しいし、ドンオッターヴィオはこれまた良く、別に普通(新国のドンジョバンニはクヴィツェンだとかエレールだとか一癖も二癖もある歌手が好演していることもあって)のドンジョバンニ(シモーネ・アルベルギーニ)だなと思っていたらこれまた良いし、ツェルリーナ(石橋栄実)は声量もあって実にツェルリーナ、カタログの歌では凡庸なレポレッロ(レナート・ドルチーニ)と感じたのに立ち居振る舞いというか芝居が上手いこともあって、これまた見事なレポレッロで、観終わったときの満足度は極めて高い。声量あってのオペラでもあるな(もちろん声がでかいだけではない)。
期待していた鉄平の騎士長も地獄(ではなく天上からだったな)から朗々と響かせて満足。
特に今回のドン・ジョヴァンニは普段は退屈極まりないドンオッターヴィオ(レオナルド・コルテッラッツィ)の2幕の森の中の歌が抜群におもしろくて、そこで気づいたが、まるでバロックオペラのように、繰り返し後は自在に装飾を付けて変型させている。良く良く聴いていると全員が全員そのスタイルで歌っているのだった。つまらんわけがない。この演奏のおかげで本当におもしろいモーツァルトを聴けたのだった。
これは指揮者(パオロ・オルミ)の要求なのだろうか? それとも(特に目立ったから)ドンオッターヴィオの歌手の要求なのだろうか? いずれにしても聴いて実におもしろかった。
そういえばカーテンコールで合唱が出てこなかったが、なぜだろう。
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