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日々の破片

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2022-12-11

_ セントラル・ステーション

妻のおすすめということでBSの録画を観た。最初、グロリアみたいなやつと聞いたのだが、全然違う(臓器売買組織らしきところから子供を連れて逃げるエピソードが近いのかなぁ)。

むしろ、言葉は悪いがブ女でとうがたちまくった女優(を演じられるのだから名優なのではなかろうか)を使って物悲しい人々を淡々と描画するという点ではアキカウリスマキみたいだし、そもそも誰かと比較するまでもなく(が無名の上ブラジルとか映画鑑賞者には馴染みがない国の作品だから、何かとたとえて説明したくなる気持ちは理解できる)実に立派なロードムービーの大傑作だった。

ブラジルのおそらくセントラル(原題はcentral de brazilみたいな感じなので、ブラジル中央駅かも知れないが、ブラジルの真ん中でみたいな意味かも知れない)駅で代書屋をやっている意地悪で小悪党な初老よりも少し年取った女性のもとに、息子と母親が、遠くにいる夫への代書を頼みにやってくる。それも2回も。息子は代書屋を嫌う。が、いきなり母親はバスに轢き殺されてしまう(すごい衝撃)。

息子はどうしようもなくて駅で寝泊まりする。そこで一計を案じた代書屋は子供を人身売買屋へ売り飛ばす(ヨーロッパの金持ちに養子として売り飛ばすということで)。が、唯一の女友達から、そりゃ臓器売買だと言われる。そんなことはないわ。そうかしら。きっと後悔するわよ。

かくして後悔しないために子供を取り返して、遠くの父親のもとへ送り届けるためのバス旅行が始まる。が、子供が一筋縄ではいかない。ついには無一文となり万事休す。が、人が良いトラック運転手兼移動神父のトラックに便乗させてもらうことになる。

が、旅をしている間に段々と人心地がついてきた代書屋が男に愛を告白してしまったために、悩んだ男は二人を置き去りにする。

ますます万事休す。腕時計を換金して父親の住む町へどうにかたどり着くのだが、そこでも問題発生。父親は引っ越した後なのだ。が、子供が機転を利かせて(さすがにこの時点では代書屋を信用しきっている)金策に成功。余った金で記念写真を撮った後で無事旅は続く。

着いた先にも父親はいない。が、最初の妻の息子が登場(最初の出現シーンから大工という点で引っ掛かるようにはなっている(子供は父親がたった一人で家を建てることができる大工だというのが自慢なのだ))。こいつが実に良いやつ(映画作家の腕が冴えまくっている)でそれまでの苦労が帳消しっぽい。その弟はしかしひねこびてしまっている(妻曰く、兄貴は父親を良く知っているが、弟は幼い頃に別れたのでそのあたりが大人に対する人間不信となっているのではないか)。

が、弟も腕が良い木工大工で子供に手伝わせながら独楽を作ってやる。独楽は最初のセントラル駅の外で母親が死ぬことになる原因の一つでもあってくるっと話が回る。独楽みたいだ。

が、最後には当然別れが来る。収まりが良い別れではあるが、当然のように寂寞は残る。

記念写真は紙焼きではなく、プラスティックのカラフル(代書屋は赤、子供は青だったかな)な小さな筒に入ったスライド写真みたいなやつで、離れた場所で二人がそれぞれ覗き込む。これも良い演出。

実に見事な作品だった。

代書屋は、若い頃に家出をしてその後1回だけ父親と街角ですれ違う。そのときのエピソードから、親子関係というものを非常に冷めた目で見ているので子供の父親訪問についても相当斜に構えている。父親という存在そのものに対して不信感があるからだ。

で、ブラジルというお国柄ではそれを額面通りに受け取るべきなのかも知れないが、父親心があるおれには、どうにもその親父は照れてすっとぼけたことを言ってしまったために、一生、娘から嫌われるは性格を歪めるはしてしまったような気がする。

が、最後の最後で代書屋はもう一度父親の顔を見たいというような述懐をするのだが、自分が知らないいろいろな親子関係を知ったから、かも知れないし、そこも余情のうち。

実に良い作品だ。

セントラル・ステーション [DVD](フェルナンダ・モンテネグロ)

こんな傑作なのにアマプラにも入っていないんだなぁ。


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