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「北朝鮮に鉄道マニア34人で押しかけた話」がおもしろかったので、ふと思い立って1982年、大学生の頃にシベリア鉄道に乗ってユーラシア大陸横断したときのことをfacebookに書き出してみた。異様に鮮明に覚えていることと完璧に忘却の彼方に散ってしまったこと(なぜか特に食事だ)があって記憶の妙がおもしろい。
書いてみるとそれなりに反応があったのでまとめてみる気になった。
結構な長さ(14000字、原稿用紙にして35枚くらいだ)なのでnoteを使ってみようと思った。還暦子育て日記(の前のやつ)とか読みたくてnoteにアカウントを作ったのを思い出したからだ。
というわけでソ連旅行記だ。この中に出てくるソ連や東ドイツは既に存在しない。かたやロシアでかたやドイツだ。しかし国は存在しないが場所も人も存在する。
新国立劇場のアルロー版は多分3~4回目だが、今回は席(3階中央最前列)のせいか全体の俯瞰っぷりと字幕の読みやすさから、妙に物語の構造がはっきりわかった。ホフマンという詩人が出待ちの間に歌劇場のカフェで学生相手に3つの恋話をするが、議員の陰謀により出待ちの相手に去られて自殺するという実に妙な物語なのだが、3つの恋話とそれぞれに出現しては恋を破綻させる悪魔、常にホフマンにつきまとう詩神の関係が妙にくっきりと浮かび上がった。
偏にはホフマン役のカパルボの歌と立ち居振る舞いが抜群だというのがあるのだろう。女声陣ではオランピアの安井陽子の超絶技巧が目立ったが、アントニア(歌的には最も好きなキジバトの歌を歌う)がちょっと弱いかなぁ(その分、普段は半分寝てしまう使用人の歌が実に楽しめた)くらいでいずれもばっちりだった。
要は芸術と現実についての考察が、物語なのだった。
詩神は恋愛に現を抜かして詩作をさぼる(現実を生きて芸術を放棄している)ホフマンを現実世界の恋愛から引き剝がして芸術の世界に連れ戻そうと画策する。
ホフマンの3つの物語は、それぞれ芸術の一つの側面をテーマにしている。
オランピア: 人工物に生命を吹き込む物語。悪魔は人工物に生命があるかのように見えるレンズをホフマンに与える
アントニア: 芸術のために生命を賭ける物語。悪魔は表現のためなら死をも厭わない姿をホフマンに見せる
ジュリエッタ: 芸術作品は芸術家の鏡像という物語。悪魔は自らの写し絵を求める(のだが、未完の最たるパートなので詰めが甘くどうにもとっちらかっている。しかし悪魔の手先であるジュリエッタとの舟歌の二重奏が示すように、実際には詩神と悪魔は表裏の関係にある)
ステラ: 上記3つの芸術の各側面を体現している現実の女性なので、セリフ上、オランピアでありアントニアでありジュリエッタであるとされる。
ところが冒頭でステラの鍵は現実の権力者である議員に奪われている。現実ではホフマンは何も得ることができない。かくして彼は現実での死を選択する。
詩神は芸術の勝利を歌う。
これまでのホフマン物語の中で最高におもしろかった。
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