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東劇でMetライブビューイングのドン・ジョヴァンニ。
予告編でみたペーター・マッテイの歌がとても良かったので楽しみに観に行く。なぜか演出家の考え(放蕩者ではなく犯罪者の物語)は知っていたので、演出も楽しみである。だいたいの演出は、ドン・ジョヴァンニは本気で女性たちを愛している信念の人となっているが、この演出のドン・ジョヴァンニは本気で女性を犯すことを至上の快楽としていてそのためには殺人も厭わない変質者らしい。というか、行動はどちらも同じなのに、後者と決めればそりゃそうだ。
というわけで、最初のドンナ・アンナのあたりからして、本気で抵抗するドンナ・アンナ(演出によっては好きよ好きよも好きのうちだったり、父親にばれたので取り繕うドンナ・アンナに見えたりもする)だ。
おかげで単なる当て馬のように見えるドン・オッターヴィオが(すぐに権力に頼るのはともかく)親身になってドンナ・アンナを支える良い役となる。結果として二人の二重唱がかってないほど、真摯で美しく聴こえてくる。おもしろい。
さらにドン・ジョヴァンニの品性の卑しさは、無理やりツェルリーナと踊りながら尻を揉むセクハラ行為などでも示される。というか、マッテイは最初演出家と相当の話し合いが必要そうだったらしいが、まあそうだろうな。が、実に良い。
ツェルリーナとマレットに有色人種をもってきたのはちょっとおもしろい。というか、妙にそれっぽく見えて、なるほどこれはありだなと思った。
最後、地獄落ちはかってないほどのおそろしい業火に包まれる演出でおっかない。
指揮のナタリー・シュトゥッツマンは序曲で指揮っぷりが映されているが、メリハリが実に明解でおもしろい。農民コンビとあわせてちょっと狙いすぎのダイバシティ公演っぽい(したがってドン・ジョヴァンニも悪漢と規定される)印象がなくもないが、テンポ、演出、歌手、どれもとても良かったので、すべて良しだった。
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