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ヨンチェバ目当てでローマ歌劇場のトスカを観に上野。
それにしても相変わらずいざ鎌倉となったら真っ先に手を回して逃げ出しそうな連中が、妙な格好で芸術院と文化会館の間をうろついていて気持ち悪い。
ヨンチェバはもちろん期待通りだったが、それよりも、期待を遥かに上回るグリゴーロとマリオッティとオーケストラに心を打ちのめされる。とんでもない名演だった。
グリゴーロは高音が必要な歌唱の直前にピコッと背伸びするのが、観ていてやたらと微笑ましい(ひげのおっさんにかわいいは無い気もするが、なんか妙にかわいい)。で、こんなに良い声だったか?(メトのライブビューイングで何度か見ている) と驚くほどの美声で素晴らしい。演技も抜群じゃん(背伸びするのは演技ではないが、歌うぞ! という気構えみたいなものが感じられるからか、とても良い)。
オーケストラの音も実に美しい。バランス作りの問題だとしたらマリオッティが抜群なのだ。特に2幕後半の音のうねりと三幕のソロヴァイオリンの美しさがとても良かった。
びっくりしたのは牧童で、あまりに良く通る声でうまいので女性なのかと思ったら、カーテンコールで本物の子供が出てきてびっくりした。末恐ろしい。グリゴーロと仲良くなったのか、二人で出てきて物まねっこをしたりしてこれまた微笑ましい。
いつも不満しか感じないスカルピアはブルデンコという大柄な人だが、これまた満足する。朗々と手前勝手な信条告白(どう考えてもプッチーニがイッリカにオテロのイヤーゴのクレドのプッチーニ版用にセリフを作れと命じたのではないかと思う)にも凄みがある(もちろんテデウム行進曲も)。
ゼッフィレリの演出らしいコスプレ演劇だが、ここまで重厚に作られていて歌手がかっちりと演じているとまったく退屈しない。
とても良いものを観られて満足しまくった。
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