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第1次世界大戦後という時代をデラシネ(コスモポリタン)と自らを律して中近東をうろうろした女性の写真家/作家アンネマリー・シュヴァルツェンバッハの短編集。
女性に対する描写が妙だと思ったら、本人レズビアンで途中ホモセクシュアルの夫と結婚して、結局女友達と放浪することになって自転車事故で30代で死んだうえに、娘の行状がまったく気に食わないナチシンパの母親が残っている作品全部焼却処分したという筋金入りのコスモポリットだった。
どうしても似たような境遇(ではない)似たような状況似たような設定のポールボウルズの作品群(天幕の夜などの、自分で自分を無意識のうちに流刑にしてしまった(こちらは欧州人ではなく米国人だが))を類推してしまうが、作家としては比較にならないほどだめなんだけど、それでも魅力はあった。
要は作家としての力量はゼロに近いと思いながらも(読んでいて退屈しまくる)結局読み切ったのは、おれが好きな真情溢るる軽薄さで満ちているからだろう。
ほとんどの作品は遺跡発掘の退屈な作業をしている欧州人の女性が仲間のアメリカ人や英国人、他の欧州人とともに、その地を訪れる欧州人(本人コスモポリットなので欧州人とそれ以外(英国人含む)を峻別している)とその地のベトウィン人やペルシャ人と、まったく合わない気候、風習、風土、文化を冷淡に眺めて(たまに親切)時間だけが過ぎて病気になって死んだりうんざりしている様子を描写するだけとなっている。
たまに越境に失敗するユダヤ人の少年や虐殺されるアルメニア人のドラマもあるが、ただ目の前を通り過ぎるだけで、デラシネ文学ここにありのような冷淡さに満ちている。が、冷淡に眺める以外にどうしようもないのだった。
おもしろくはなかったが、おもしろかった。
雨に打たれて: アンネマリー・シュヴァルツェンバッハ作品集(アンネマリー・シュヴァルツェンバッハ)
ただ、88%の地点で、そこまでは良い翻訳(原文は見ていないが日本語として)と思っていたのに、
ゴードンがカトリーンのところへ行って、大きな声でいった。
「気をしっかりもつのよ、カトリーン! 人前で泣くのはよくないわ!」
と、ゴードン(文句なく男)が唐突に女言葉を喚いてしまったのには驚いた。なぜここでミスして、しかもそのまま出版してしまったのだろう?
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